2022 Fiscal Year Research-status Report
トランスクリプトーム解析によるパッションフルーツ成熟前落果の発生機構解明
Project/Area Number |
21K05582
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
篠原 卓 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (90459719)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生理的落果 / パッションフルーツ / 熱帯果樹 / RNA-Seq / エチレン / オーキシン / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
パッションフルーツは,適熟となって落果する生理的落果を適熟のサインとして収穫する亜熱帯果樹である.近年,高品質な果実生産を目的とした国内栽培が増加している.成熟前落果(PmFD)した果実は、追熟しても尚、酸度が高すぎるため問題となる.パッションフルーツのPmFDに関与する主要な細胞壁分解酵素が存在するのか,幾つかの酵素が相乗的に働いているのかを明にするために,本研究はRNA-Seq解析によりパッションフルーツのPmFDに関与すると考えられる物質を特に細胞壁分解酵素に注視して選抜することを目的としている. 2022年度は離層部のRNA-Seq解析のうち,統計的解析によりPmFDにかかわる遺伝子を選抜した.その結果,約48,000 遺伝子の配列が検出され,そのうち1,300 遺伝子が,果実成熟段階が進むにつれて有意に発現量変動した.その1,300 遺伝子について,いくつかのデータ解析技術で絞り込みとグループ分けを実施した結果,「エチレン」,「オーキシン」,「細胞構造機能関連物質」が落果関連遺伝子として抽出された. これらの情報をもとにHeat mapを作製したところ,離層部では果実の成熟が進むにつれ,エチレン関連遺伝子が発現増加し,オーキシン関連遺伝子は発現減少する傾向が示された.更に,離層部では成熟が進むにつれ,細胞構造機能に関わる遺伝子が発現減少傾向を示し,細胞壁構造に関わる物質を分解する遺伝子の発現増加がみられた. これらの遺伝子の動きについてRT-PCRによる検証実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたRNA-Seq解析のデータ解析が終わり、成熟前落果(PmFD)にかかわる物質を選抜が終わった。また、RT-PCRによってこれらの選抜した遺伝子の増減を確認した。これをうけPmFDにかかわる植物ホルモンと、それにより誘発されたと考えられる物質の増減が明らかになってきたため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度であるため、不足しているデータを補う実験を実施する。3年間のデータで、さらに詳細な解析を行っていくとでPmFDのメカニズムを明らかにして研究成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
研究計画では、2022年度に成熟前落果(PmFD)に関与すると判断された細胞壁分解酵素の活性を離層部サンプルを用いて生化学的に定量し、2023年度にRNA-Seq解析の解析対象物質を広げる予定であった。 研究効率の観点から、2022年度にRNA-Seq解析の解析対象物質を広げて解析を実施し、生化学的実験は2023年度に実施するため物品費に次年度使用額が生じた。
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