2023 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトーム解析によるパッションフルーツ成熟前落果の発生機構解明
Project/Area Number |
21K05582
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
篠原 卓 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (90459719)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | パッションフルーツ / 熱帯果樹 / 生理的落果 / RNA-Seq / エチレン / オーキシン / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
パッションフルーツ(PF)は,近年,高品質な生食用果実生産を目的とした国内栽培が増加している.PFは果実成熟が進行して適熟となると生理的落果するため,一般的には落果した果実を収穫する.しかし,成熟が完了する前に生理的落果する果実が一定の割合で存在する.この成熟前落果した果実は追熟しても,なお果汁酸度が高いため問題とされている.本研究の目的は,PFの成熟前落果発生機構を明らかにすることである. まず,果実成熟が進行し生理的落果が起きる前後で,離層部において発現量が変化する遺伝子を網羅的に調査するためにRNA-Seq解析を実施し,落果関連物質を選抜・特定するビッグデータ解析を行った.その結果,離層部におけるエチレン関連遺伝子の発現増加,オーキシン関連遺伝子の発現減少,及び細胞構造機能関連遺伝子の発現の増減が落果へ関与することが示唆された. 次に,落果関連物質に関わる遺伝子12個を選抜し,成熟前落果に対して感受性品種(‘サマークイーン’:SQ)と耐性品種 (‘ルビースター ’:RS)の間で発現傾向を比較するため,栽培試験を実施した.その結果,エチレンと細胞構造機能関連の遺伝子は果実成熟の進行とともに発現増加がみられ,SQはRSよりも微量なエチレン生成にも関わらず落果率が急激に増加した.栽培学的に判明していたSQの成熟前落果に対する感受性の高さが,生理学的・分子生物学的に裏付けられた.一方,オーキシン関連遺伝子の増減は不明確だった. さらに、SQを用いて果実にエチレン生合成阻害剤及びオーキシン剤処理を施し,成熟前落果に対する影響をみる栽培実験を実施した.その結果,オーキシン剤の処理はエチレン放出速度を減少させる傾向を示した. 以上の研究結果より,成熟前落果発生機構を考察した.
|