2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of plant defense mechanisms against seed transmission of plant viruses
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21K05590
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
磯貝 雅道 岩手大学, 農学部, 准教授 (30312515)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラズベリー黄化ウイルス / RBDV / 種子伝染 / RNAサイレンシング / RDR6 / DCL2 / DCL4 |
Outline of Annual Research Achievements |
R3年度は、植物のもつウイルス防御機構であるRNAサイレンシングと、種子伝染阻害との関連を解析するため、以下の2つの解析を行った。 1つ目に「Nicotiana benthamianaでのラズベリー黄化ウイルス(raspberry bushy dwarf virus, RBDV)の植物体でのウイルス局在解析」を行った。その結果、RBDVは感染N. benthamianaの茎頂分裂組織に感染していること、花芽および花芽から形成される花粉、胚珠、胚のうにウイルスが検出された。茎頂分裂組織には未分化な幹細胞が存在する。茎頂分裂組織にRBDVが感染しているため、ウイルスに感染した地上部組織が形成され、卵細胞もウイルスに感染していると考えられた。しかしながら、その卵細胞が受精し、球状型胚、心臓型胚、魚雷型胚へと胚が発達しても、胚にウイルスは検出されなかった。 2つ目に「RNAサイレンシングに関与する遺伝子の発現を抑制させたN. benthamianaでのRBDVの種子伝染率の変化の解析」を行った。RDR6の発現を抑制したN. benthamiana (ΔRDR6植物)、およびDCL2とDCL4の発現を抑制したN. benthamiana (ΔD2D4植物)を用いて、RBDVの種子伝染率を解析した。RBDV感染ΔRDR6植物およびΔD2D4植物に、それぞれ健全ΔRDR6植物およびΔD2D4植物の花粉を人工授粉し、種子を得て、それら種子から生育させた実生のウイルス検出率(=種子伝染率)を調べた。その結果、野生型植物の場合と同様に、ウイルス感染している実生は検出されなかった。これらの結果は、RNAサイレンシングが胚へのウイルス感染阻害に関与しないことを支持する結果であるが、少ないながらもRDR6およびDCL2とDCL4は発現しているので、RNAサイレンシングが胚で効果を発揮している可能性は否定できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ΔD2ΔD4植物はおよびΔRDR6植物ともに、少ないながらもRDR6およびDCL2とDCL4は発現しているので、RNAサイレンシングが胚で効果を発揮している可能性は否定できなかった。そこで本年度は、DCL2とDCL4をゲノム編集により発現を停止したdcl2dcl4植物をRBDVの種子伝染解析に用い、dcl2dcl4植物でのRBDVの種子伝染率解析および胚へのウイルス感染の解析を行う。この実験についての準備は完了しており、実行可能である。さらに予定になかったが、オオムギでは高率に種子伝染するムギ斑葉モザイクウイルス(barley stripe mosaic virus, BSMV)が、RBDVと同様にN. benthamianaでは種子伝染率が0%であることを明らかにした。これにより、BSMVを供試ウイルスとして加えることで、RNAサイレンシングによる種子伝染抑制について比較解析が可能となり、両ウイルスでの共通性・普遍性について解析可能となった。これらのことから、現在までの進捗状況として、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
RBDVはN. benthamianaにおいて、胚にウイルスは検出されず、種子伝染しないことを明らかにした。そこで、RBDVが高率に種子伝染すると報告されているレッドラズベリーについて、胚の各発達段階におけるウイルス感染について解析し、ラズベリー胚へのウイルス感染成立の時期を明らかにする。これにより、胚へのウイルス感染と種子伝染を明らかにする。 RBDV感染ΔRDR6植物およびΔD2D4植物での種子伝染を解析したが、野生型植物と同様に種子伝染は検出されなかった。しかしながら、これら植物体中では少ないながらもRDR6およびDCL2とDCL4を発現しているので、それらが胚において、RNAサイレンシング効果を発揮している可能性があった。そこで、本年度は、DCL2とDCL4の発現をゲノム編集により停止させた植物(dcl2dcl4植物)を用いて、種子伝染とRNAサイレンシングとの関連について解析する。さらに、dcl2dcl4植物を用い、胚へのRBDV感染を解析する。RNAサイレンシングにより、胚でのRBDV感染が阻害されているのであれば、dcl2dcl4植物では、胚にRBDV検出されると考えられる。 ウイルス分類でRBDVと異なるウイルス科に所属するBSMVは、オオムギでは高率に種子伝染する一方、RBDVと同様にN. benthamianaではBSMVの種子伝染率が0%であることを明らかにした。そこで、BSMVを供試ウイルスに加え、上記の解析をBSMVでも行い、RBDVと比較することにより、RNAサイレンシングによる種子伝染抑制についての共通性・普遍性について知見を得る。
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Research Products
(6 results)