2021 Fiscal Year Research-status Report
植物葉面細菌の6型分泌系を利用した植物細菌病害の防除技術の開発に資する基盤構築
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21K05592
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
古谷 綾子 茨城大学, 遺伝子実験施設, 助教 (30570270)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 6型分泌系 / 葉面細菌 / 植物細菌病 / 病害防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機栽培された4種のアブラナ科植物(ミズナ‘早生水菜’、コマツナ‘夏用黒小松菜’ 、カラシナ‘レッドからし水菜’、およびルッコラ原種‘セルバチコ’)より葉面細菌を分離した。分離された細菌のコロニーの形や色は分離した植物種によって異なる傾向があり、それぞれの植物より、216、150、144、および114株の細菌を分離した。 つづいて、分離した細菌をアブラナ科黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv. campestris: Xcc)MAFF106712株の発光変異株(以下、Xcc発光菌株)とR2A寒天培地上において一晩共培養後に発光観察を行った。その結果、Xcc発光菌株の単独培養時と比較して共培養時に発光レベルを著しく抑制する葉面細菌として、ミズナ、コマツナ、およびルッコラ原種の分離株の中からそれぞれ10、4、12菌株が選抜された。選抜されたルッコラ原種の分離株との混合培養時における発光抑制はとくに顕著で発光はほとんど観察されなかった。一方、カラシナ分離株からは選抜されなかった。 Xcc発光菌株との共培養試験により選抜された菌株のうちの8菌株(ミズナ、コマツナ、およびルッコラ原種分離株から、それぞれ3、2、および3菌株)について、アブラナ科黒腐病の発病抑制効果を検討した。2週齢の無菌栽培したハクサイ‘京都三号’を用いて接種試験を行ったところ、ミズナ分離株1菌株を除く全ての葉面細菌との混合接種区においてXcc野生株の単独接種区と比較して病害の抑制が確認された。 葉面細菌の抗菌活性試験により、選抜されたいずれの分離株もXccに対するいわゆる抗生物質もしくは抗菌物質と呼ばれる二次代謝産物産生能はもたないことが示唆された。 以上のように、本年度はXccの増殖を抑制する葉面細菌を選抜することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
選抜された葉面細菌によるXccの増殖抑制が細菌間の接触に依存するかを確認するとともに、接触に依存することが確認された葉面細菌については全ゲノム解析により同定を行うことを予定していたが、できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、選抜された26菌株の葉面細菌について、これらの菌株によるXccの増殖抑制が細菌間の接触に依存するかを確認することに注力する。これに並行して、葉面細菌によるアブラナ科黒腐病の発病抑制効果の検討を推進し、全ゲノム解析を行う菌株を決定する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:葉面細菌の分離源の選定が大幅に遅れてしまった。また、当初の研究計画に組み入れていた次世代シークエンサーを用いた葉面細菌の群集構造解析の目的や本研究課題における位置づけが計画立案時点でも不十分であったことから、実施を見送ったため。 使用計画:次世代シークエンサーを用いた葉面細菌の群集構造解析を除く当該年度に実施できなかった研究に充てるため。また、次世代シークエンサーを用いた細菌の全ゲノム解析の追加データ解析の費用として支出予定である。
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