2021 Fiscal Year Research-status Report
宿主ゲノムとウイロイドゲノムを活用した病徴予測モデルの開発
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21K05608
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松下 陽介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (00414665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孫 建強 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業情報研究センター, 主任研究員 (90838624)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウイロイド / 宿主植物 / 病徴 / ゲノム / 予測モデル / small RNA / トマト / クラスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、トマトに対する PSTVd の病原性(無毒・弱毒・強毒)を予測するアルゴリズムを開発する。また、この予測アルゴリズムをジャガイモに対する PSTVd の病原性予測に適用し、トマトとジャガイモに対する PSTVd の病原性の違いを調べることを目的とした。これまでの研究は、ウイロイドの病原性をそのゲノム配列と viroid-sRNA で説明しようとする研究が主であり、viroid-sRNA の配列からサイレンシングの標的となる宿主植物側の mRNA を探索する研究はなかった。これに対して、本研究は、ウイロイドと宿主植物のゲノム配列の両方に着目し、ウイロイドの病原性を予測するアルゴリズムを開発し、ウイロイドの病原性の説明に試みるものである。このアルゴリズムを使用することで、圃場で発生するウイロイドの病原性の強弱を正確に予測できるようになり、ウイロイドと宿主ゲノムから発生被害の予測や潜伏感染リスクを判断できるようになる。予備試験では各クラスタに含まれているPSTVdを、先行研究で報告された病原性へ照合すると、各クラスタが PSTVd の病原性の強弱に応じて分類された。しかし、先行研究の結果は、異なる基準で評価されているため、不正確である可能性がある。そこで、代表者は、各クラスタから PSTVd 13変異体を選び、基準を統一させて接種試験を行い、各クラスタを再評価した。13のPSTVdのRNAををトマトの子葉に接種して、接種後1~2か月後に病徴を判定し、無病徴、弱毒、中間、強毒を分類した。その結果、予備試験で設定した各クラスタに分類された。次に、クラスタ分類上、強毒性と予測された PSTVd と弱毒性(あるいは無毒性)と予測された PSTVd を7系統選抜し、それらの感染トマトからRNAを抽出して、small RNA配列を得た。次年度にこれらの配列の解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各クラスタから PSTVd 13変異体を選び、基準を統一させて接種試験を行い、各クラスタを再評価した。13のPSTVdのcDNA配列を付加配列を付与した状態で人工合成し、それらを鋳型にRNAを転写した。それらをトマトの子葉に接種して、接種後1~2か月後に病徴を判定し、無病徴、弱毒、中間、強毒を分類した。その結果、予備試験で設定した各クラスタに分類された。次に、クラスタ分類上、強毒性と予測された PSTVd と弱毒性(あるいは無毒性)と予測された PSTVd を7系統選抜し、それらの感染トマトからRNAを抽出して、small RNA配列を得た。ここまで研究計画通りに遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に作成した予測アルゴリズムを用いて、GenBankで公開されているすべての PSTVd の(トマトに対する)病原性を予測する。次に、強毒性と予測された PSTVd と弱毒性(あるいは無毒性)と予測された PSTVd を選び、両者を比較する。この比較を通じて、トマトゲノム上における両者のマッピング位置を評価し、マッピング位置と病原性の関係を調べる。 予測された強毒 PSTVdと弱毒 PSTVd をトマトに接種した得られた、感染トマトの small RNAを解析する。ウイロイド感染によって生じたsRNAが宿主植物の病徴を誘導すると考えらていることから、得られたsRNAの結果とトマトのゲノム上のマッピング位置と病原性の関係を評価する。 また、予測アルゴリズムをジャガイモに対して適用する。同じ PSTVd をトマトとジャガイモに適用した際に得られた結果を比較し、両者の違いを解析する。両者の違いが PSTVd の病原性に与える影響を考察する。同時に、これらの PSTVd をトマトとジャガイモに感染させた時の病状を接種試験により検証する。
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Causes of Carryover |
感染植物のsmall RNA解析の一部を次年度に移行したため。
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