2023 Fiscal Year Research-status Report
感染症対策に向けた日本産マダニ類全種の形態記載,宿主リスト,分布図の完備
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21K05612
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
山内 健生 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (00363036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マダニ / 分類学 / 形態学 / 新種記載 / 寄生 / 宿主特異性 / 分布 / 衛生動物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本産マダニ類の分類学的研究、ならびに分布や宿主情報の集積を継続中であり、2023年度には以下の成果が得られた。 従来、ユーラシア大陸に広く分布するコウモリ寄生マダニ類は、コウモリアシナガマダニIxodes vespertilionis Koch, 1844、I. collaris Hornok, 2016、I. ariadnae Hornok, 2014、コウモリマダニI. simplex Neumann, 1906の4種であると考えられていた。近年の研究により、東アジア産のコウモリ寄生マダニ類が上記4種と顕著な遺伝的差異を示すことが報告されていたが、詳細な形態学的比較がなされていなかった。そこで、日本各地で採集された3種のコウモリ寄生マダニ類について、形態と分子の両方から研究を進めた結果、これら3種はいずれも既知種とは異なる種であることが確認された。そこで、I. nipponrhinolophi(宿主:キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ;分布:群馬県~熊本県;タイプ産地:山口県美祢市)、I. fuliginosus(宿主:ユビナガコウモリ、モモジロコウモリ;分布:群馬県~熊本県;タイプ産地:神奈川県相模原市)、I. fujitai(宿主:テングコウモリ;分布:滋賀県、岡山県;タイプ産地:滋賀県犬上郡)の3新種を記載した。 2020年から2022年の3年間に、栃木県足利赤十字病院(栃木県足利市)で確認されたマダニ刺症49例のうち40例がタカサゴキララマダニAmblyomma testudinariumに起因するものであったことを記録した。関東地方北部は従来タカサゴキララマダニが分布していなかった地域であるが、現在では本種が定着し、本種によるマダニ刺症が多く発生していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響が小さくなり、野外調査や学会への参加が可能となったため、以前に比べて研究を進めやすくなったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
利尻島などの離島における調査を予定している。これまでに集めたサンプルの整理と同定を進め、論文作成と投稿を進める予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナの影響で予定していた出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。今年度、出張と論文掲載費として使用する予定である。
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