2023 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫腸管の囲食膜タンパク質はインシュリンシグナルを介してボディサイズを規定する
Project/Area Number |
21K05615
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川畑 俊一郎 九州大学, 理学研究院, 名誉教授 (90183037)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キイロショウジョウバエ / 囲食膜 / 遺伝子ノックダウン / 腸内細菌叢 / インシュリン様ペプチド / 酢酸菌 / 乳酸菌 / 日和見細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果は、1)Pin-15b RNAiハエのノックダウン系統ではコントロール系統と比較して成虫の中胸の長さが有意に増加したが、血リンパ中の糖濃度には有意な差はなかった。2)Insulin-like peptide 2 (ILP2)は、ノックダウン系統において転写量が増加し、飢餓耐性も上昇した。したがって、腸内細菌叢については、ノックダウン系統ではLactobacillus属とProvidencia属の細菌数が増加し、Pin-15bは腸内細菌叢の恒常性維持の働きを担っていると考えられた。3)抗生物質処理により腸内細菌数を減少させたハエ(axenic、AXハエ) の解析を行った。当研究室で単離されたAcetobacter persici (SK1)、A. indonesiensis (SK2)、L. pentosus (SK3)、P. rettgeri (SK4) をAXの一齢幼虫から継続的に感染させたところ、SK1、SK3、SK4感染群においてAXハエと比較して中胸長が有意に増大した。ノックダウン系統の囲食膜の透過性が上がることで、腸内細菌叢の影響によりハエの代謝経路が変化して中胸長が増加したことが示唆された。 最終年度には、ノックダウン系統は、体長や体重だけでなく、総タンパク質量や総中性脂肪量、さらにはILP2と脂質動員ホルモンの発現が増加することを見出した。無菌飼育したノックダウン個体では体長変化や代謝異常が認められなくなり、SK1、SK3、SK4を単独感染させることで表現型がレスキューされた。代謝変化と生存率の関係を調べるため栄養条件を変えて飼育したところ、ノックダウン個体では高脂肪食飼育下で短命になり、酵母を含まない低栄養食条件では寿命が延伸した。囲食膜は腸内細菌叢の恒常性維持に寄与するとともに、宿主の代謝系を制御していると考えられた。
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