2021 Fiscal Year Research-status Report
共生器官特異的ペプチドを標的としたRNAiによるアブラムシの共生戦略の解明
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21K05619
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
内海 俊樹 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (20193881)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アブラムシ / ブフネラ / 共生 / 菌細胞 / システインリッチペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
アブラムシは、体内の菌細胞とよばれる共生器官で、共生細菌ブフネラとの絶対共生を成立させており、そこには機能不明の菌細胞特異的システインリッチペプチド(BCR)が存在する。本研究は、RNAiによるBCR遺伝子の発現抑制を試み、「アブラムシのBCRはブフネラとの共生に必須であるか?」という問いに答えることを目的とする。 これまでの研究で、エンドウヒゲナガアブラムシに、BCR遺伝子をターゲットとした合成RNAを3日間給餌すると、生存率が極端に低下すること、生存個体の体重は対照区の半分以下に低下し、繁殖力も低下することを見出していた。しかし、BCR遺伝子の発現が抑制されることによって生じると考えられるこれらの現象が、安定しないことが課題であった。その原因として、アブラムシ体内の強いRNase活性が考えられた。そこで、本年度は、修飾RNAを合成して給餌し、BCR遺伝子の発現量を1個体ずつ解析した。BCR3遺伝子を標的としたLNA(Linked Nucleic Acid)を合成して人工飼料に混合し、エンドウヒゲナガアブラムシに給餌した。給餌3日後までの生存率、給餌3日後の生重量とBCR3遺伝子の発現量、給餌7日後までの繁殖力を測定し、人工飼料のみ、および、GFP遺伝子を標的としたLNAの給餌を対照区として比較した。その結果、LNA給餌と対照区では、有意差はみられなかった。このことから、エンドウヒゲナガアブラムシでは、LNAによるRNAiの効果は見られないと判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の目標は、修飾と非修飾のどちらのRNAにRNAiの効果があるかを見極め、また、実験系と評価方法の信頼度を高めることとしていた。令和3年度の研究により、LNAではRNAiの効果は見られないことが明らかとなり、令和4年度以降は、未就職の合成RNAによる実験を実施することとした。アブラムシ1個体ごとの標的遺伝子の発現については、プロトコルの再検討などにより、解析の精度をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な推進方策に変更はない。申請時の研究計画に従って、実験を実施する。 令和4年度以降は、単一のBCR遺伝子だけでなく、複数のBCR遺伝子を標的とした合成RNAの給餌実験も遂行し、BCRがブフネラとの共生に必須であることを証明する。
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Causes of Carryover |
修飾RNA(LNA)の効果が見られた場合には、追加合成をするための予算を留保していたが、LNAに期待していた効果が見られなかった。そこで、次年度に計画している実験に必要なRNAの合成に使用することとした。RNAは不安定であり、年度末も近づいていたことから、次年度に入ってから合成することにした。
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