2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular basis for the inactivation of semiochemicals in the stink bug antennae
Project/Area Number |
21K05620
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (40423008)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カメムシ / フェロモン / 餌探索シグナル / 不活性化 / ヘキサナール |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の多くは,外界から情報として入ってくる特定の匂い物質 (情報化学物質) を受容し,好適な餌や配偶者を探し出す.このような情報化学物質の探索は,同種間の昆虫ならびに昆虫と植物など異種間の生物間相互作用を理解する上で役立つ.昆虫が外界から適切に情報を得るためには,情報化学物質の受容と合わせて,いったん受容した情報をリセットし,次に来る新しい情報に備える必要がある.しかしながら,受容され役目を終えた情報化学物質が不活性化される仕組みはあまり研究されていない. 申請者は近年,カメムシの行動を制御する情報化学物質の研究を進めている.その過程で,カメムシ触覚内に存在するアルデヒド酸化酵素が情報化学物質の不活性化に関わると予想している.すなわち,ヘキサナールを警報フェロモンとするオオツマキヘリカメムシがヘキサナールの酸化物であるヘキサン酸に反応しないことから,ヘキサナールの酸化がその不活性化の本体と予想した.このことを検証するために,まずは,オオツマキヘリカメムシ触覚内にヘキサナールを酸化する酵素活性が存在するかを確認し,さらにはその酵素を精製し,働きや構造を明らかにすることで,カメムシにおける情報化学物質の不活性化メカニズムの解明を試みることを計画した. オオツマキヘリカメムシ触覚からヘキサナールを酸化しうる酵素が存在するか,また存在するとしたら,その酵素を精製することを計画した.2021年度は野外でオオツマキヘリカメムシが十分に採集できなかったが,同属のマツヘリカメムシが大量に採集できたため,マツヘリカメムシを用いて実験を進めた.マツヘリカメムシの触角からタンパク質・酵素を抽出したところ,ヘキサナールを酸化する活性が認められた.さらに,この酵素の精製を進めたところ,候補となるタンパク質を2つにまで絞り込むことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は野外でオオツマキヘリカメムシが十分に採集できなかったが,同属のマツヘリカメムシが大量に採集できたため,マツヘリカメムシを用いて主に実験を進めた.目的とする酵素活性を確認することができ,さらには酵素精製もある程度まで進んでいるため,今後,同じやり方がオオツマキヘリカメムシにも適用できると想定しており,おおむね順調に研究が進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
マツヘリカメムシと同様の手法を適用し,オオツマキヘリカメムシでも酵素活性の確認と精製を進める.また,クサギカメムシについては,酵素精製の検討がまだ十分ではなく,2022年度はクサギカメムシを使った実験も行う予定である.
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Causes of Carryover |
キャンペーンのため,吸光マイクロプレートリーダーが当初の予想よりも安く購入できたため.また,酵素精製が予想以上に順調に進み,物品費がやや少なく済んだため. ここまでは順調であったが,候補となる2つのタンパク質をさらに分けることには,これまで以上に慎重な検討が必要になると予想している.そのために掛かる物品費に使用する予定である.
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