2022 Fiscal Year Research-status Report
「メス化遺伝子」 がオスで発現しても正常に「オス化」できる分子制御機構とは?
Project/Area Number |
21K05626
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
後藤 寛貴 静岡大学, 理学部, 助教 (60737899)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 性的二型 / クワガタムシ / 性決定機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、メス化遺伝子として知られるtransformer 遺伝子の性決定カスケード中の役割とその多様化について研究する。通常、この遺伝子は性特異的な選択的スプライシングによって、メスのみで機能的なTraタンパクを発現しメス化を誘導する。一方、オスでは非機能的なタンパクしか発現せず機能を持たない。しかし研究代表者はクワガタムシ科の一部の種において、雌雄の両方で同じ機能的なTraが発現することを見出し、オスでは機能的なTraを発現しているにもかかわらず、正常にオスへと分化する機構の解明に取り組む。
2022年度は、雌雄で同一のtraアイソフォームを発現した種であるオキナワノコギリクワガタを用いて、雌雄同一のアイソフォームが発現することの再現性の確認、およびtraのコファクターであるtra2の性特異的な発現の可能性について検証した。結果、6月に沖縄でサンプリングを行い、これまで用いていた個体とは異なる個体群由来の個体でも、やはりオスとメスのtra発現アイソフォームは同一であり、この特異な現象の再現性が確認された。また、tra2の発現は雌雄特異性が見られなかった。この結果により「tra2の発現に性特異性があることで雌雄で同じtraを発現していてもメスのみでメス分化が起こる」という可能性はほぼ否定された。今後は、RNAseqを用いたオス特異的なオス分化因子を探索するとともに、Traタンパクの検出を通してtraのmRNAの翻訳制御の可能性を検証する予定である。
また、クワガタムシ科内のtra遺伝子の数と発現パターンを網羅的に調べるため、新たにヒラタクワガタ、マグソクワガタ、キンオニクワガタにおいて、トランスクリプトームDBの構築に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現象の再現性が確認されたことで、tra2の発現解析や、複数種でのtraのCharacterizationといった実験に本格的に着手することが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、RNAseqを用いたオス特異的なオス分化因子を探索するとともに、Traタンパクの検出を通してtraのmRNAの翻訳制御の可能性を検証する予定である。
また、クワガタムシ科の祖先的なグループから派生的なグループまでを網羅して、様々な種でRNAseqを行っており、tra遺伝子の数やその発現パターンなどから、オキナワノコギリクワガタで見られる雌雄で同じアイソフォームが発現するという現象についての進化過程の推定を行う基盤を整える。
|
Causes of Carryover |
2022年度は研究の前提データの再現性の確認を慎重に行ったため、次年度使用額が生じた。 異なる個体群由来の個体を用いて独立に行った実験で再現性が確認されたため、繰り越し分は、遅れて実施できなかった実験や、予定していた学会発表などの経費として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)