2023 Fiscal Year Annual Research Report
「メス化遺伝子」 がオスで発現しても正常に「オス化」できる分子制御機構とは?
Project/Area Number |
21K05626
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
後藤 寛貴 静岡大学, 理学部, 助教 (60737899)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性的二型 / クワガタムシ / 性決定機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、メス化遺伝子として知られるtransformer 遺伝子の性決定カスケード中の役割とその多様化について研究する。通常、この遺伝子は性特異的な選択的スプライシングによって、メスのみで機能的なTraタンパクを発現しメス化を誘導する。一方、オスでは非機能的なタンパクしか発現せず機能を持たない。しかし研究代表者はクワガタムシ科の一部の種において、雌雄の両方で同じ機能的なTraが発現することを見出し、オスでは機能的なTraを発現しているにもかかわらず、正常にオスへと分化する機構の解明に取り組んだ。
2023年度は、クワガタムシ科において雌雄で同一のtraアイソフォームを発現する種が、対照としているオキナワノコギリ以外にも存在している可能性を検証した。具体的には、クワガタムシ科内で様々な系統的位置を持つ複数種においてRNA-seqを通した発現遺伝子カタログを作製し、それに基づいて、それぞれの種で雌雄でtraの発現解析を行った。その結果、雌雄同一のアイソフォームが発現する種がオキナワノコギリ以外にも複数存在することが明らかになった。それらの種はクワガタムシ科の系統内に散在しており、同一アイソフォーム発現の進化は独立である可能性が示唆された。さらに特定の種において機能解析を行った結果、驚くべきことにtraがオスにおいても発生学的な機能を有する可能性が示唆された。つまり、オスで機能的なTraを発現しているにもかかわらず、正常にオスへと分化する機構として、Traが制御する下流の標的制御因子が変化している可能性が示唆された。
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