2022 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性・水産資源回復に寄与する大規模クリークの生物生息基盤改良技術の開発
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21K05630
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
加納 光樹 茨城大学, 地球・地域環境共創機構, 教授 (00527723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 塩性湿地 / 大規模クリーク / 植物帯構造 / 微地形 / 魚類・無脊椎動物群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の塩性湿地(汽水域にあるヨシ等の抽水植物からなる湿地)のクリークは、開発や災害によって大半が消失したが、ニホンウナギをはじめ様々な絶滅危惧種や水産有用種を含む魚類・無脊椎動物の重要な生息場所であり、その保全・再生は急務である。本研究では東京湾岸埋立地に造成した大規模クリークの種多様性や水産有用種の生息密度を、関東平野に局所的に残存する天然クリークと同等の水準に高めるために、生物生息基盤に関わる主要な物理環境(植物帯構造やクリーク微地形)を改変し、魚類・無脊椎動物群集の応答を明らかにすることを目的とする。 野外実験地の大規模クリークにおいて、2022年の初夏にヨシ等の抽水植物を除去した区画と除去しない区画を確立した後、定期的に植生管理を行うとともに、水質や底質、植生などの環境調査や各種漁具・調査器具による魚類・底生無脊椎動物の定量採集・観察を実施した。調査期間中に両区画ではマサゴハゼやトビハゼなどの絶滅危惧種、マハゼやスズキなどの水産有用種を含む魚類14種、エビ類5種などの生息が確認された。魚類については干潮・満潮時ともに区画間で大きな差異は認められなかったものの、エビ類については満潮時に植物を除去しない区画で多い傾向が認められた。 今後は、植物帯構造以外の生物生息基盤に関わる主要な物理環境についても改変し、魚類・無脊椎動物群集の変化を追跡していくなかで、効果的な生物生息基盤改良技術について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響が残るなかでも、当初予定していた物理環境と生物生息状況の現地調査を計画通りに終えることができた。一方で、すべての環境データの解析と生物サンプルの処理・解析を当年度内に終える予定であったが、底生無脊椎動物の一部については当初予定よりも分析に時間がかかり、処理を終えることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定より野外調査で得られた生物サンプルの一部で処理が遅れているが、今後、一定の時間を割くことで処理は終えられる見込みである。今後の野外調査では、大規模クリークにおいて植物帯構造以外の物理環境を改変し、環境条件や魚類・底生無脊椎動物群集の変遷についてモニタリングを行い、効果的な生息基盤改良技術について検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定していた当該年度のサンプル処理の一部が終わらず、また、コロナ禍で学会年会に対面で参加できなかったため、それらに関係する経費(旅費・人件費・消耗品費等)の実支出がなかった。 (使用計画)当該年度に実施できなかったサンプル処理の一部を、2023年度秋頃までを目途に終了する予定であり、また、学会年会への参加も行い、経費の繰り越し分を使用する予定である。
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