2023 Fiscal Year Research-status Report
耕作放棄による農地景観の鳥類多様性崩壊の閾値を探る:農業と生物保全の共存に向けて
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21K05631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 剛 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80302595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 直樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (10631054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 耕作放棄 / 農地景観 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
景観スケールでの耕作放棄地の増加が、農地に生息する鳥類群集におよぼす影響を調べるために、岩手県の北上盆地中部において、耕作放棄の少ない景観から多い景観まで30か所を対象に調査を実施した。 それぞれの調査地設置した長さ500mの調査コースに沿って移動しながら出現した鳥類を記録した。このデータが解析上の1サンプルにあたる。それぞれの調査地で春(4-5月)、初夏(6-7月)、秋(9-10月)、冬(1-2月) に実施した。 得られたデータの適切な解析方法を探るため、2022年と本年の春と初夏のデータを対象に、空間自己相関の推定も含めた統計解析(Dorman et al. 2007)を行なった。空間自己相関では、調査地間での鳥類の移動分散の影響によって調査地の独立性を確保するためである。 その結果、空間自己相関の強さと範囲は種によって、そして年によって変化することが明らかになった。農地の主な生息地とする種の中ではカワラヒワとホオジロ、ハシボソガラス、キジ、森林を生息地とする種ではヤマガラとキビタキ、ホトトギスに有意な区間自己相関が認められた。 この空間自己相関の影響をとり除いた上で耕作放棄地との関係を見ると、鳥全体の種数は耕作放棄地の増加にともなって増加する傾向が明確に認められた。種ごとに放棄地との関係をみると、耕作田が減り放棄地が増加する景観で減少していたのは少なくヒバリのみ、放棄地の増加によって増加していたのは、ノスリとヤマガラ、キビタキなど多くの種で認めらることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耕作放棄による鳥類群集への影響はある程度明らかされつつある。当初、明確な関係が見られなかったが空間自己相関の推定も含めた解析を行なうことで、耕作放棄が、本研究の対象とする北上川中流域の水田地帯では、鳥類群集と総じて正の関係をもつことが見えてきた。今後、種ごとの耕作放棄地との関係を、出現頻度の少ない種も含めて推定できる方法を用いることで、見えてきたパターンの普遍性とそのパターンが生じる生態学的機構を明らかにすることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も確立した調査方法とデザインをもちいて、対象とする30の農地景観での調査を実施する。調査方法を固めた2022年からの3年間のデータを用い、種の豊富さ以外の多様性を示す指数を応答変数とする解析と、種ごとの個体数を応答変数とする解析、加えて出現か所週や個体数の少ない種も含めた群集構造と放棄地の関係を調べる解析を新しく試みる。 昨年までの解析デザインによる結果の論文化を進めている。秋までの投稿を目指している。上述した新しい解析の結果にもとづく論文作成も並行して進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初、2023年度に購入予定であった解析にもちいる消耗品(作図にもちいるポインティングデバイス)が、解析作業が遅れてしまい購入を解析開始予定の2024年度に延期したため。
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