2023 Fiscal Year Annual Research Report
保全遺伝学的手法とGPSテレメトリー法を用いた人の生活圏に定着化したヒグマの研究
Project/Area Number |
21K05637
|
Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
伊藤 哲治 酪農学園大学, 農食環境学群, 講師 (70751931)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ヒグマ / 保全遺伝学 / 個体間関係 / アーバンベア / GPSテレメトリー / 農業被害 / 野生動物管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで明確な知見を得ることが難しかったクマ類のアーバン化の要因について明らかにすることを目的として、ヒグマを対象に遺伝子情報から、アーバン化と個体間の血縁は関係しているか、生息密度とアーバン化の関係性、そして分集団の分布と個体の移動傾向を明らかにする。また、GPSテレメトリーの情報から、アーバン化した個体の季節的な環境利用と行動圏、行動や活動パターンを明らかにし、遺伝的情報と組みわせて解析することにより、人の生活圏への定着と移動分散の傾向について新たな知見を得ることを目的とする。 2023年度は、2箇所の圃場にてヒグマ捕獲檻を設置し捕獲を行った。その結果、2頭(オス1頭、メス1頭)のヒグマを捕獲し、GPS首輪型発信器を装着した。現在、行動追跡を実施している。2022年度に捕獲しGPSを装着した2頭のヒグマは、2022年4月に測位が途絶えた個体と、2023年8月に首輪が脱落し測位更新が途絶えた個体があった。脱落した首輪1基は回収した。2023年度のヘアトラップ調査では、調査地内の圃場および森林内にて調査を実施し、959試料(体毛)を得た。試料を選別しDNAを抽出し、現在、マイクロサテライトDNAによる分析を実施している。個体識別により、調査地内のヒグマの個体数および圃場および森林を利用する個体および個体間関係について解析を進めていく予定である。2022年の結果からは、2021~2022年に調査地域において確認された個体数は約60頭となっている。更に解析結果を得て詳細な生息状況および個体間関係を明らかにしていく。 本研究により、クマ類のアーバン化について、要因解明が期待できると考える。また、科学的根拠に基づく野生動物の管理の促進およびアーバン化したクマ類 への現地対策のための有益な情報となるだろう。
|