2021 Fiscal Year Research-status Report
琉球列島の荒野林に産する植物の現状把握に基づく保全指針の提示
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21K05644
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
國府方 吾郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40300686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 拓朗 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (10827132)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 荒野林 / 琉球列島 / 絶滅危惧植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄島における荒野林の現状調査を行ったところ、島中部に存在していた荒野林が土地開発によって消滅していることが判明した。その情報を関係機関と共有するとともに、沖縄島の残された荒野林の保全を強化する必要があることを提言した。また、琉球固有で従来から個体数が少ないリュウキュウヒメハギは、これまでよりも個体数が激減していることから、その減少要因を特定し、種レベルでの保全を更に強化する必要があることが示唆された。 久米島において、自然の荒野林と1990年代の人為的伐採によってつくられた裸地における植物調査を行ったところ、後者には前者に特産する種が少ないことが示された。また、前者にはほとんど生育しない帰化種であるセンダグザ属が後者で多く認められた。これらの結果より、自然の荒野林と人工的な裸地との環境・栽培比較調査を行い、帰化種の出現に影響する要因を特定する必要があることが示唆された。荒野林に産する複数種において、自生地外保全のための栽培実験を行ったところ、タヌキアヤメなどはある程度の土壌保湿が必要であることが示され、荒野林に産する各種で最適な栽培環境がやや異なることが示された。 シンチクヒメハギについて台湾産を含めた解析したところ、南方から琉球列島への進入が示唆された。また、荒野林と常緑広葉樹林で著しい葉形態変異を示すギーマについて、先行調査によって琉球列島の主要な島から採集したサンプルをもとに次世代シーケンサーを用いて解析を行ったところ、各荒野林で認められる葉矮小化は独立して起こっている可能性が示唆された。更に、オオマツバシバの琉球列島内における集団間の遺伝的固有性・多様性を解析するため、小笠原固有のマツバシバおよび台湾・中国に産するタイワンマツバシバを国内外協力者から提供してもらい、今後の解析に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度、特に上半期は、新型コロナウィルス拡散防止のため地方自治体がリクエストされた渡島制限のため、伊是名島(もっとも大規模な荒野林が存在する)や伊平屋島など小島嶼部での現地調査およびサンプル収集ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施できなかった伊是名島・伊平屋島の荒野林における現地調査およびサンプル収集を地方自治体から承諾・協力を受けながら実施する。 2021年度に判明した荒野林の消滅といった事実を踏まえ、保全に関連する機関・団体との情報共有を促進し、本研究の成果をこれまで以上およびリアルタイムで保全に結び付けられる体制を整える。 2021年度の現地調査の結果を踏まえ、自然の荒野林と人為的伐採によってつくられた裸地の出現植物の調査、土壌成分の分析などを行う。2021年度の栽培実験の結果を踏まえ、荒野林に産する各植物の適切な栽培条件の検討を行う。 海外渡航は2022年度も難しいと予想されるため、本研究において必要なサンプルは郵送などで提供してもらう方向を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、計画していた野外調査が出来なかった。
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