2021 Fiscal Year Research-status Report
道路上の構造物は、意図せぬうちに鳥類にどれくらいの営巣場所を提供しているのか?
Project/Area Number |
21K05647
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
三上 修 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10404055)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 元 公益財団法人山階鳥類研究所, 自然誌研究室, 研究員 (60468717)
上野 裕介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (90638818)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 固定式視線誘導柱 / 矢羽根 / エコロジカルトラップ / 腕金 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの鳥種が、木に自然に空いた穴(樹洞)や、キツツキ類によって空けられた穴に巣を作る。このような営巣可能な穴は自然界では貴重であり、その数が様々な鳥の分布や個体数の制限要因になることが分かっている。しかしこの貴重な穴を「短期間」「大量」「同一規格」で生成する生物がいる。それは我々人間である。道路に敷設された電柱および標識などの道路附属物に見られる穴は、十数メートルおきにあり、圧倒的な物量で営巣可能な場所を作り出している。 このような人工構造物への鳥類の営巣は、これまで「人間活動に対する鳥類側の巧妙な適応」という観点で捉えられることが多かった。しかし申請者らのこれまでの調査の結果、都市に住む鳥の中には、営巣場所を、人工構造物に依存している種がいることがわかってきた。たとえば、ある都市での調査では、スズメの巣の44%が電柱の鉄パイプ(腕金)に作られていた。また人工構造物が少ない郊外においても、森林内道路を調べたところ、積雪時に道路の端を示す固定式視線誘導柱の穴の11%に、巣が見られた。 これらの結果は、人間がエコシステムエンジニアとして、意図せず鳥類に営巣環境を提供している可能性を示している。しかし、あくまで申請者らが行った一部地域の結果でしかない。全体像、そして営巣の詳しい実態を明らかにできれば、それらの人工構造物を積極的に活用することで、人間活動による鳥類の生息地の破壊・分断化を緩和できる可能性がある。 そこで本研究では、北海道において2つの人工構造物「電柱(腕金)」と道路附属物の一種である「固定式視線誘導柱」に注目し、これらへの鳥類の営巣について明らかにすることを目的とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本調査は、北海道全体で、腕金および固定式視線誘導柱が、鳥類にどのような影響を与えているかを調査することも目的としている。そこで、申請者の所属する大学がある北海道の道南地域に加え、道央地域と道東地域でも調査を計画している。1年目は道南地域で調査を行った。ただし、最も調査すべき5月6月に、コロナ禍による外出の自粛があり、調査は規模を縮小して行わざるを得なかった。また秋に、道央、道東に予備調査に行き、それを元に2022年度には、それらの二地域で本調査を行う予定であった。しかし、コロナ禍の中、予備調査ができていない。その分が遅れが出ている。そこで手元にあるデータを活用し、2本の論文を発表し、1回の学会発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍に対して、社会全体では許容の方向に向いているが、まだ遠方での調査を行うのには戸惑いを感じる(多くの講義を受け持って学生に接する身としても、感染機会の確率を上げるのではないかと躊躇する)。また、2022年度は、2021年度に予定していた予備調査が行われていないので、道央、道東にいっても調査の効率が悪い。そこで、2022年度は、道南での調査を深化することで対応をする。また、そのためNPO法人バードリサーチの三上かつら氏に研究協力者として参加してもらう(すでに昨年度末に調査に協力してもらい論文の執筆者にも入っている)。他地域の調査は、2023年度に行う。
|
Causes of Carryover |
秋に予備調査に行くことができず、その分、旅費が余ったが、2022年度に予備調査に行くので、その際に使用する。
|