2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05649
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 乃生 筑波大学, 芸術系, 教授 (40375457)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 名所図会 / 茅葺き民家 / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021度から継続して近世の名所図会を対象に茅葺の建物が風景の構成要素として描かれているのかを把握した。日本風俗名所図会(鈴木棠三編(1983-1938)『日本名所風俗図会』,角川書店)に掲載されている風景を描いた図会を対象とし、それぞれの絵については描かれかた(近景、鳥瞰)と茅葺建物の有無、茅葺建物については数、屋根形態、用途などのデータベースの作成を完了した。対象とした36の名所図会に描かれた建物のうち29,584棟の建物が茅葺建物だった。そのうち入母屋が最も多く18,982棟(81.2%)で、寄棟が3,984棟(17.0%)、切妻が410棟(1.8%)ある。入母屋がすべての地方に見られるのに対して、寄棟が関東地方に多くあったことがわかった。茶店、工房などの商業施設が6,783棟(57.6%)で最も多く、ついで神社、寺などの宗教施設が2,592棟(22.0%)で、農家、漁家などの民家・集落が2,406棟(20.4%)だった。さらに、用途によって、茅葺屋根の描き方や軒先の状況が異なることが確認できた。例えば、寺社の場合はまっすぐな点線で茅を表現し、軒先は切り揃えられ立派な庇がついていることが多いのに対し、民家の場合は棟から軒先までゆるやかな点線で茅を表現し、軒先の茅を揃えていないものが多い。用途によって茅の葺き方に違いがあったと考えられる。これらの結果は日本建築学会大会で発表した。 修理工事報告書について、2022年度はサンプルとして合掌造り家屋のみについて実施した。合掌造り家屋のうち重要文化財に指定されているのは8棟(うち2棟は移築保存)ある。そのうち修理工事報告書があるものが7棟だった。茅の産地に言及しているものが5棟、そのうち1棟が地域外の茅を使用している記載があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
名所図会の分析項目を増やしたため時間がかかり、修理工事報告書のデータベース作成に着手できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023度は修理工事報告書に関するデータベース作成を進める予定である。合掌造り家屋で試したところ、茅の産地については報告書への記載がないところがあること、記載の方法や内容にばらつきがあることがわかった。データベースの作成に加え、できる限り聞き取りなどで補うこととする。文献資料からの茅葺の位置付けについての分析は未着手であり遅れている。近世の図会の分析については、年度末までに学会への投稿をめざす。
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Causes of Carryover |
分析用のパソコンの購入が遅れことと、資料は古本を購入し想定より少なくなったため、物品日に差額が生じた。2023年度はじめに購入予定である。
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