2021 Fiscal Year Research-status Report
Planning research toward sustainability in hot spring areas using hot spring heat
Project/Area Number |
21K05653
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
渡辺 貴史 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (50435468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬越 孝道 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30232888)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 温泉熱 / 温泉地 / 多角的活用 / 運営スキーム / 適性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的Ⅰの温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明に関して,まずは,温泉熱の代表的な活用手法である発電事業の概要を把握するために,再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法における再生可能エネルギー発電設備のうち地熱発電に係る公表データから導入状況を明らかにした。 その結果,2022年4月現在の事業認定された発電設備の件数は,100件であることが明らかとなった。事業認定された発電設備がある都道府県数は,15であった。そのうちもっとも件数が多かった都道府県は大分県(57件)であり,次いで鹿児島県(11件),熊本県(8件)であった。発電設備は,上位3県の発電設備件数が全体の76%を占めていることから,九州地方に多く分布していることが明らかとなった。発電出力は合計出力が160,939kWであり,平均が1609.39 kW,標準偏差が5435.46 kW,最大値が46,199 kW,最小値が11 kW,範囲が46188 kW,最頻値が110 kWであった。地熱発電による発電出力は,その他の再生可能エネルギーと比較した場合,合計出力が少なく,発電設備間における発電出力の差が大きい可能性が推察された。 目的Ⅱの温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,源泉数の多さと国内の網羅性により選定された大分,静岡,長野,福島県,北海道の5道県の温泉地を対象に,温泉熱の活用量を推定するために必要なデータを収集した。具体的には,各道県の環境部門が実施する温泉に関わるデータ(源泉数,温度,湧出量,使用湯量等)と温泉熱の活用量に関係する気象データ(外気温等)を取得・整理した。温泉熱の活用量の推定に向けては,温泉熱有効活用に関するガイドライン(環境省自然環境局,2019)等をはじめとする先行研究を参考に評価方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,後述する通り交付申請書に記載された2つの研究の目的に対して,以下の通りデータ収集及び解析方法の検討こそ実施したものの,成果の導出には至っていない。そのため本研究の「研究の目的」の達成度は,「やや遅れている」と判断される。 (1)第一の目的である事例分析による温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明については,公表データにより温泉熱の代表的な活用手法の一つである発電事業の対象の全容を把握した。しかし本年度は,対象の特定に止まり,運営スキームの解明に向けたサーベイリサーチとインタビューの実施とそれらを踏まえた成果の導出に至っていないこと。 (2)第二の目的である温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,温泉熱の活用量を推定するために必要なデータを収集した。しかし本年度は,必要なデータの収集に止まり,評価手法の構築・解析とそれらを踏まえた成果の導出に至っていないこと。
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Strategy for Future Research Activity |
目的Ⅰの温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明については,前年度までの成果により特定された発電の事業者及び発電設備が立地する自治体担当者を対象とした,温泉熱の多角的な活用と運営実態の解明を目的とした調査票を作成し,サーベイリサーチを実施する。サーベイリサーチの結果からは,発電事業を,活用と運営実態にもとづき類型化を行う。各類型を代表する事例に対しては,サーベイリサーチの補完を目的としたインタビューも実施する予定である。現在,想定しているインタビュー先としては,わいた温泉郷(熊本県阿蘇郡小国町及び大分県玖珠郡九重町)と別府温泉郷(大分県別府市)を予定している。これらの結果からは,類型別に温泉発電を主体とした温泉熱の多角的な活用の実現及び持続的な運営スキームを考察する。 温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,昨年度に収集した温泉及び気象に関わるデータと国内・海外の先行研究のレビューにより構築された評価手法にもとづき,温泉地の温泉熱の多角的な活用の潜在能力の評価を行う。波及効果の発揮からみた温泉地の評価に向けては,目的Ⅰにおいて行うサーベイリサーチとインタビューにより波及効果の実態を明らかにし,評価するための指標を検討する。 なお得られた成果に関しては,関連学会誌(ランドスケープ研究,農村計画学会誌,都市計画論文集等)に投稿する。また,本課題の成果を温泉熱の多角的な活用に関心を持つ方々に対する普及啓発に向けては,調査協力者への成果の報告やホームページへの掲載等を通じて,積極的に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に使用する予定の研究費が生じた経緯は,次の通りである.2021年度は,公表データにもとづき対象事例こそ特定できたものの,新型コロナ感染症による行動制限によりインタビューができなかった。また温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,温泉地の温泉熱の多角的な活用の潜在能力の評価に必要なデータの収集や手法の検討にこそ着手できたが,波及効果の発揮を評価する手法の構築論拠となる波及効果の実態把握に必要なサーベイリサーチとインタビューが実施できなかった。次年度に使用する予定の研究費分については,前年度にインタビューが出来なかった温泉地における現地踏査費,サーベイリサーチ実施に係る諸経費,論文投稿費,発表する大会等の参加費及び旅費,そして評価手法の構築に向けた取り組みに係る諸経費等に充てる予定である。
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