2022 Fiscal Year Research-status Report
沖積錐に着目した機械学習による土石流危険流域の抽出手法の構築
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21K05674
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
輿水 健一 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主任 (30636171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 聡 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主幹 (50446366)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 教授 (80378918)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 沖積錐 / 土石流 / 機械学習 / GIS / 地形・地質 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、地質の物性が大きく異なる2つの地域(新第三紀堆積岩類地域と古第三紀付加体地域)を対象にして、決定木分析や現地調査を通して、地質の違いによる沖積錐の形成プロセスを検討した。今年度は、前年度調査した水系に隣接する同一地質の水系に調査範囲を拡張した。 決定木分析の結果、地質によらず沖積錐形成に寄与する地形因子は共通しているものの、地形因子の閾値はそれぞれの地質により異なることがわかった。さらに、現地調査結果から、沖積錐形成の地形因子の閾値の違いは、岩石強度が異なることに伴う、地形形成プロセスの違いや土砂移動プロセスの違いが影響していることが推測された。 さらに、決定木分析により沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、実際に土石流がどの程度の確率で発生したかを検証した。検証対象としたのは、2003年に土石流が頻発した北海道日高地方厚別川水系(新第三紀堆積岩類地域)である。具体的には、この水系に隣接する同一地質の水系の決定木分析の結果に基づき、沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、2003年豪雨直後の空中写真や現地調査に基づく土石流痕跡などをもとに、実際の土石流の発生状況の検証を行った。 その結果、沖積錐が形成されうると推定された流域では沖積錐が形成されないと推定された流域よりも土石流の発生率が全体的に高い傾向にあり、決定木分析により沖積錐が形成されうると推定された流域は実際に土石流が発生しやすい傾向にあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
決定木分析や現地調査から、地質の違いによる沖積錐形成に寄与する地形因子やその閾値を明らかにし、地質の違いによる沖積錐の形成プロセスを検討することができた。さらに、決定木分析により沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、実際に土石流がどの程度の確率で発生したかを、2003年に土石流が頻発した北海道日高地方厚別川水系を対象にして、検証することができた。検証により、決定木分析により沖積錐が形成されうると推定された流域は実際に土石流が発生しやすい傾向にあることがわかった。以上により、河川の浸食や人工改変により沖積錐が見られない流域においても、潜在的な土石流発生ポテンシャルを評価できた。これらの結果については、学会発表で成果を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
土石流の発生リスクの高い流域を決定木分析からさらに高い確度で抽出するためには、沖積錐が形成されないと推定されたにも関わらず、実際には土石流が発生した流域の要因を明らかにする必要がある。この検討を通して、決定木分析を用いた、後背山地流域の地形・地質条件に基づく土石流危険流域の抽出手法の確立を行う。
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Causes of Carryover |
検証結果を現地にていくつか確認する必要性が生じたため、現地調査旅費として使用する予定である。
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