2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on the seed dormancy release process of Abies sachalinensis
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21K05675
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
福田 陽子 (後藤陽子) 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (00370825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 聡一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50753836)
松田 修 九州大学, 理学研究院, 助教 (60346765)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トドマツ / 種子 / 休眠解除 / 遺伝子発現 / 内生ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、自動風選機および近赤外分光法を利用した種子の選別と低温湿層処理がトドマツ種子の発芽率および発芽速度に与える影響について検討した。2020年に採取した31系統(母樹)の種子について百粒重を調査し、11系統について充実率を調査した。百粒重の平均値は0.45g-1.33g、充実率は36.8%-70.0%であり、系統間で充実率が大きく異なっていた。このうち8系統の種子について風選の条件を検討した結果、最適な条件を選択することですべての系統で充実率が75%以上に向上した。このうち5系統について近赤外分光法による選別を行い、種子の充実種子指標(SQI)により不稔種子と充実種子を選別し、さらに充実種子をSQIが低く脂質蓄積量が多い種子(Aランク)とSQIが高い種子(Bランク)に分けた。これらの種子について0℃で42日間低温湿層処理を行い、28日間発芽試験を行った。その結果、Aランク種子の推定発芽率は87.2%と最も高く、Bランク種子では75.0%、風選種子では62.2%、未精選種子では54.2%であった。平均発芽速度においては、種子の選別の効果は見出せなかった。種子の選別効果を調べた実験と同じ5系統の風選種子を用い、低温湿層処理期間が発芽に及ぼす影響を調べた。低温湿層処理は0℃で33日、62日間、102日間、141日間行い、発芽試験は28日間行った。その結果発芽率においては、低温湿層処理期間の効果は見出せなかった。一方で、平均発芽速度の推定値は33日間では11.7日、62日では10.9日、102日では9.7日、141日では7.3日であり、低温湿層処理期間の長さに応じて発芽速度が速まる傾向が見出された。また、これらの発芽試験では系統による発芽速度の違いも認められ、最も発芽速度の差異が大きい33日の低温湿層期間では最も発芽速度が速い系統と遅い系統では3.3日の差があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トドマツ種子の精選手法および低温湿層処理期間が発芽率および発芽速度に与える効果が明瞭に見出されており、来年度以降計画している遺伝子発現解析および内生ホルモン定量解析に向けた試験材料の準備および実験計画の基礎となるデータが着実に得られている。また、RNA抽出や内生ホルモン分析、胚の形態的変化の顕微鏡観察についても、手法の検討を進めている。トドマツ種子には種皮と胚乳の間隙に樹脂成分が含まれており、RNA抽出や内生ホルモン分析に影響を与える可能性があることから、その影響を極力排除できるよう予備試験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降には、低温湿層処理期間における発現遺伝子プロファイルおよび内生ホルモンの変化を明らかにし、トドマツ種子の休眠解除プロセスを解明する計画である。現在積雪環境の異なる産地の種子を材料とし、休眠解除プロセスにおける産地間変異の解明を進めており、そのデータを活用して遺伝子発現解析および内生ホルモン分析の試験材料とする系統を選定する予定である。さらに内生ホルモンが発芽に及ぼす効果が解明できれば、外生ホルモンの利用による休眠解除手法を検討する。
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Causes of Carryover |
種子の発芽試験データの収集および解析を優先したため、種子のRNA抽出実験および顕微鏡観察の進捗が遅れたことから、これらに必要な予算を次年度に繰り越すこととした。
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