2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of effective method for strain collection of Japanese truffles
Project/Area Number |
21K05676
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小長谷 啓介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90612739)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 菌根菌 / セイヨウショウロ / 分離 / 細菌 / 菌株保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、採集が難しく、世界的に遺伝資源の蓄積が乏しいトリュフの菌株の拡充推進に必要な、菌の分離・保存技術の高度化を目的とする。そのために必要な3課題:①菌株の分離・保存に最適な栄養培地の探索、②トリュフ菌が根に共生した部位である「菌根」の分離源としての有効性、③トリュフ菌の菌糸成長を促す有益な細菌群の活用、の検討を通じて、トリュフ菌の分離・保存の成功率を向上させた菌株の獲得手法を提案する。本年度はトリュフ菌株の採集における「菌根」の分離源としての有効性を明らかにするため、マテバシイおよびカシワの菌根から菌の分離培養を試みた結果、カシワから5菌株の分離に成功した。千葉、茨城、九州のマテバシイ林の計7林分を対象として、トリュフの菌根およびきのこを探索した。きのこは全く見つからなかった。トリュフ菌と思われる菌根約200根端について菌の分離培養を試みたが、おそらくトリュフ菌の菌根と形態的に類似した他の菌種の菌根が多く混じっていたことや、コンタミ菌の影響によりトリュフ菌の菌株は得られなかった。次に、石狩のカシワ林において同様の調査を行ったところ、きのこは見つからなかったが、約100の菌根のうち、トリュフ菌と思われる5菌株の分離培養に成功した。以上から、きのこのみならず菌根もトリュフ菌の菌株確立において有効な分離源になり得ることが示唆された。次に、トリュフ菌の菌糸成長を促す有益な細菌群を探索するため、トリュフ菌の菌根から分離され、同菌の成長を促進した1菌株の種を同定した。また、日本産トリュフ2種のきのこ内部から細菌を分離培養した結果、約250の細菌株の確立に成功した。そのうちBradyrhizobiumに属するか近縁な種の菌株が約半数を占めていたことから、これらの細菌株を用いて、トリュフ菌の菌糸成長に及ぼす影響を明らかにする対峙培養試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分離できたトリュフ菌の株数は少なかったものの、「菌根」の分離源としての有効性を示すことができた。また、トリュフ菌の菌糸成長を促す細菌群の選抜候補も十分に得られたことから、研究は概ね順調に進んでいるとみなした。
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Strategy for Future Research Activity |
カシワやトドマツなどマテバシイとは異なる樹種で構成される森林を対象にして、野外で探索する分離源の違い(きのこ、菌根)が、トリュフ菌株の獲得成功率に及ぼす影響を明らかにする。トリュフから分離培養された細菌株がトリュフ菌の成長に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度内に異動が生じ、物品購入やデータ解析が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度はそれらの物品購入とデータ解析を直ちに行う予定である。
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