2021 Fiscal Year Research-status Report
林地へのカリウム施肥に潜むリスクを明らかにする -養分アンバランスと樹木の成長-
Project/Area Number |
21K05678
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
長倉 淳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353787)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリウム / セシウム吸収 / ヒノキ / トドマツ / ウダイカンバ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではカリウムが長期にわたり施肥されている2つの調査地A、Bを対象としている。調査地Aのカリウム施肥区2プロット、カリウム施肥中断区2プロット、無施肥区4プロットの胸高直径と樹高を比較したが、現時点でカリウム施肥による明らかな成長抑制はみとめられなかった。ヒノキ葉の放射性セシウム濃度は、無施肥区に比べカリウム施肥区およびカリウム施肥中断区で低かったが、安定同位体セシウム濃度も同様で、カリウム施肥によってセシウム吸収が抑制されていることが明らかになった。調査地Bのトドマツ葉の安定同位体セシウム濃度は、カリウムを施肥しているNPK施肥区で無施肥区によりも有意に低かったが、カリウムを施肥区していないNP施肥区でも無施肥区より低かった。トドマツでは当年葉と一年葉を分けて分析したが、安定同位体セシウム濃度は一年葉に比べ当年葉で高く、セシウムが若い部位に集積するという既往の研究を裏付ける結果が得られた。調査地Bのウダイカンバ落葉の安定同位体セシウム濃度は、NP施肥区で最も高く、NPK施肥区と無施肥区でほぼ同じであり、ウダイカンバではカリウム施肥によるセシウム吸収抑制はみられなかった。このことから、カリウム施肥によるセシウム吸収抑制は樹種によっては効果がみられない可能性がある。試験地Bで2015年に採取した土壌では、トドマツ林、ウダイカンバ林ともに交換性カリウム含有量が無施肥区で最も高く、NP施肥区で最も低かった。トドマツ葉では土壌の交換性カリウム含有量の多い無施肥区で、安定同位体セシウム濃度が高かったことから、土壌の交換性カリウム含有量とセシウム吸収抑制効果は必ずしも一致しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響で、初年度は遠方にある調査地Bに現地調査に行けなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は調査地Bに行ける予定である。もし新たな試料採取ができなかった場合は、過去に採取された試料を代替として研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、遠方にある調査地での現地調査、試料採取ができなかったため、旅費や分析費の支出が予定より少なくなった。次年度に現地調査と分析を行う予定であり、その際に使用する。
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