2022 Fiscal Year Research-status Report
林地へのカリウム施肥に潜むリスクを明らかにする -養分アンバランスと樹木の成長-
Project/Area Number |
21K05678
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
長倉 淳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353787)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリウム施肥 / セシウム吸収 / 養分バランス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、長期のカリウム施肥によって土壌の養分バランスはくずれないのか、樹体の養分バランスは損なわれないのか、を確認することを目的とし、2つの試験地の土壌と葉の試料について養分分析を行った。試験地Aのヒノキ林では、7年施肥区は無施肥区および4年前に施肥を停止した3年施肥区よりも土壌では交換性K量が多く、土壌のMg/K比が低く、葉でもK濃度が高く、葉のMg/K比が低かった。42年の長期施肥が行われている試験地Bのウダイカンバ林では、施肥区の土壌の交換性K量は無施肥区より低かったが、土壌のMg/K比は施肥区で低い傾向で、葉のK濃度は施肥区で高く、葉のMg/K比も施肥区で低かった。試験地Bのトドマツ林では土壌の交換性K量や葉のK濃度に処理間差はみられなかったが、土壌の交換性Ca、Mg量は施肥区で低く、土壌のMg/K比は施肥区で低かった。しかし、葉のCa、Mg濃度やMg/K比に処理間差はみられなかった。 これらのことから、カリウム施肥によって、土壌と葉の両方、またはどちらかでKに対してMgが少ない状態になっていることが明らかになった。Mgはクロロフィルの構成元素であり、欠乏すると古い葉の脱落や光合成活性の低下が生じる可能性がある。林地へのカリウム施肥はセシウム吸収の抑制に有効である一方、マグネシウム欠乏のリスクがあることを明らかにしたことは放射能汚染地域の森林利用促進のため、林地へのカリウム施肥を検討している自治体や森林組合に情報提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響で、初年度に調査地Bに現地調査に行けなかった影響で、予定よりも分析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度から研究部から企画部へ異動となり、調査やデータ整理、論文執筆等の研究時間確保が難しい状況となった。分析については非常勤職員の補助を依頼する予定である。研究時間の確保については現在検討中である。
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Causes of Carryover |
新規非常勤職員の人件費を見込んでいたものの、なかなか採用に至らなかったが、採用できたため次年度には使用予定である。
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