2021 Fiscal Year Research-status Report
Are deciduous broad leaved trees increasing in hemiboreal forests? Utilization of data of multiple sites, long-term, and tree-rings
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21K05682
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 智之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20633001)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 北方林 / 落葉広葉樹 / 針葉樹 / 長期的動態 / 年輪解析 / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界的に報告されている北方林における落葉広葉樹の増加の普遍性の検証、メカニズムの解明をするために、北海道全域の天然林を対象に、落葉広葉樹率の変化が地理的にどのように起きているのか、20世紀初頭から変化し続けているのか、落葉広葉樹・針葉樹がそれぞれどのように環境変化に応答しているのか、を検証する。そのために、(1)多地点データによる落葉広葉樹率変化の地理的パターンの解析、(2)歴史的資料解析による落葉広葉樹率の20世紀中の変化の解析、(3)年輪データ解析による環境変化応答の落葉樹・針葉樹の比較を行う計画となっている。 本年度は、(1)については文献調査を行い、関連する先行研究事例やデータを収集した。(2)については、北海道演習林に保管されている資料の整理と情報の収集を行った。また、1960年代以降の毎木測定データを解析した結果、北海道演習林では落葉広葉樹の割合が広域的に増加していた。(3)については、北海道演習林に保管されていた年輪解析資料を数値データ化した。また、2021年に伐採された樹木50本から、年輪を解析するための切断面を円板状に採取した。この採取した円板をスキャナーで画像として取り込み、年輪幅の測定を行った。これらの年輪データを解析し、針葉樹と落葉広葉樹の長期的な幹成長パターンを解析した結果、針葉樹では、過去100年にわたって連続的に成長量が減少している可能性が示唆された。一方で、落葉広葉樹は1980年以前はほとんど減少は見られず、1980年以降に減少する傾向が示された。つまり、針葉樹の成長量の低下が、北方林の落葉広葉樹の増加に関係している可能性がある。今後は、この要因を解明するために、環境要因との関係性の解析や、年輪の安定同位体比の解析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には、計画通りに進行している。当初、課題(1)の情報収集はまだ不十分ではあるが、課題(2)および(3)の情報収集、解析が想定以上に進んでいる。サンプル処理やデータ解析のために、外国人の研究員を雇用することを計画したが、採用予定の研究員が新型コロナウィルスの影響で来日できず、2022年度に雇用することとなったため、研究の順序は当初計画とは異なるが、全体としては順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、課題(1)の北海道内における広域の多地点のデータの収集を進める。集めたデータをもとに、北海道内の広域的な落葉広葉樹の割合の変化を定量化する。課題(2)については、2021年度に整理した東京大学北海道演習林の過去の資料を数値化し、過去と現在を比較することで、落葉広葉樹割合の長期的な変化を明らかにする。課題(3)については、まず年輪幅の変化と環境要因の関係を解析する。次に、年輪の安定同位体比を分析し、そこからわかる樹木の水利用効率や環境の水分条件の変化と、年輪幅の関係を解析し、どのような環境要因が、針葉樹および落葉広葉樹の成長量変化に寄与しているかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
2021年5月に、サンプル処理・年輪解析・データ解析を担ってもらう研究員として外国人の研究員を雇用することとしたが、新型コロナウィルスの影響で来日ができず、2022年度に採用することとなった。それに伴い、分析作業も2022年度に行うこととなり、経費の多くを2022年度に支出することとなった。
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