2022 Fiscal Year Research-status Report
森林性両生類の効率的な保全に向けた水陸生態系間の波及効果の解明
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21K05684
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩井 紀子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50630638)
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Project Period (FY) |
2021-02-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活史の進化 / 数理モデル / 変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保全対象となることが多く、水陸両生態系を利用する森林性両生類を対象とし、水域から陸域への波及効果の大きさを解明する。適応度形質である対象種の成熟サイズの決定において、水域環境と陸域環境が与える影響の比較を、飼育実験と野外調査の両面から行う。飼育実験では、変態後の成長速度と成熟サイズに与える影響について、異なる陸域環境条件下で比較する。野外調査では、野外個体の骨に現れる成長履歴の解析を行う。成熟サイズの決定要因のうち、水域、陸域生態系が与える影響の大きさを比較し、どちらを保全することが効果的なのかを明らかにする。 2年度目は、初年度に作成した数理モデルを用いて、変態点の説明と、対象種の生態を逆算する研究について論文化し、投稿した。現在Under reviewとなっている。 上記の数理モデルを用いることで、水陸の成長率と死亡率を推定できることから、複数種での変態応答を明らかにすることとし、ニホンアマガエル、ヤマアカガエルの飼育実験を行った。さらに、環境の大きく異なる、森林域と都市域の集団から採卵し、その変態戦略を比較することで、森林と都市の水陸の成長・死亡を比較する。森林域3か所、都市域2カ所から採卵し、飼育を開始した。 水陸の影響の大きさを比較する際に必要な、変態サイズについて、水晶体の安定同位体分析から推定する手法の開発を進めている。幼生期にはトウモロコシを原料とする餌、変態後はコオロギのみを与える飼育を行い、亜成体時点でサンプルとした。このサンプルについて、水晶体の中心部を細かく剥離し、外周部と安定同位体比が大きく異なるのか、異なる場合、切り替わる地点を明らかにできるか、について検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度開始しなかった、環境を変えての飼育実験については、環境が大きく異なる都市域と山間域で採卵した幼生の変態戦略を比較をすることで、同等の検証を行うこととし、飼育実験を開始した。 骨の断面から成長を追う研究については、骨ではなく、水晶体を用いた手法を導入することとし、変態時の体サイズの推定のための手法開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
飼育実験を続行し、飼育終了次第、初年度に作成した数理モデルにデータを当てはめ、都市域と山間域で比較することで、水陸の成長率と死亡率の値を推定する。 水晶体を用いた変態サイズ推定を進める。 数理モデルの論文の査読対応を進める。
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Causes of Carryover |
代表者が昨年度産休・育休による休業期間を取得したため、飼育実験が今年度に移動した。 休業期間に伴って研究機関が延長となっているため、全体の予定が後ろ倒しになっており、一部の予算を翌年度に繰り越している。内容としては計画通り使用していく予定である。
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