2023 Fiscal Year Research-status Report
日本の林野火災リスク評価に向けた地表火の延焼速度・火線強度の推定
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21K05692
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
吉藤 奈津子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80514223)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 地表火 / 林野火災 / 延焼速度 / 室内燃焼実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
林野火災リスクを評価するには、火災発生の危険度と発生後の延焼拡大リスクの両方を評価する必要がある。日本の森林における林野火災発生後の延焼拡大リスクの評価にむけて、代表的な広葉樹林の一つであるコナラ林を対象に、①地表火の延焼速度に影響を及ぼす林床可燃物パラメータである可燃物堆積量及び堆積深の現地調査による測定、②地表火を想定した小規模室内燃焼実験による延焼速度の測定、を行った。室内燃焼実験にはコナラ林の林床から採取して風乾したコナラの葉リターを用い、1.5m×1mの実験装置に一様に敷き詰めて模擬林床とした。堆積量は0.3~1.5kg/m2の間で複数段階設定した。傾斜なし、無風の条件下で一辺からライン状に点火して火炎伝播の様子を動画撮影し、映像を基に火炎到達距離と経過時間から延焼速度を算出した。可燃物堆積量が多いほど延焼速度は速くなったが、スギ穂先及びアカマツ葉を用いた同様の室内燃焼実験結果と比較すると、同じ堆積量であればコナラ葉の方がスギ穂先やアカマツ葉より延焼速度が速いことが分かった。その要因として、コナラ葉の模擬林床はパッキング率(=重量/(体積深x密度))が小さい、すなわち、堆積状態にある可燃物の充填度がスギ・アカマツより小さかったこと、また、広葉樹であるコナラ葉の表面積-体積比は、スギ穂先やアカマツ葉に比べて大きいこと、が考えられる。この結果は、日本の森林における林野火災の延焼拡大リスクを評価するにあたって、樹種や林床可燃物条件の違いが及ぼす影響を考慮するための知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた、広葉樹林を対象とした現地調査による林床可燃物データの収集及び室内燃焼実験による延焼速度の測定を実施することができたので、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き多様な森林タイプを対象に地表火延焼速度に影響を及ぼす林床可燃物パラメータの収集・解析を行うとともに、必要に応じて追加の室内燃焼実験を行う。また、Rothermelの式を用いた地表火延焼速度の推定を行い、実験結果と比較検証して日本の森林における有効性を検討する。
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Causes of Carryover |
林床調査やサンプル採取のコナラ林調査地として計画時には他県のサイトを想定していたが、より近隣に調査地を設けることができたため旅費の支出が当初の計画より少額となった。一方、実験時のデータ記録等に使用するノートPCが新たに必要となったため、物品費の支出が当初の計画より増額となったが、全体としては残額が生じた。この残額は、次年度の調査・実験・解析のための物品費として使用する。
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