2021 Fiscal Year Research-status Report
スズメバチ女王を飼い殺す新たに発見された寄生バチ:その生態と系統
Project/Area Number |
21K05693
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小坂 肇 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20343791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐山 勝彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353711)
神崎 菜摘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70435585)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / 寄生生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
長野県内で5月から12月にかけてスズメバチ(スズメバチ属)を採集し、解剖した。生きて採集されたスズメバチの一部を飼育し、死亡後に解剖した。当地に分布する全6種類のスズメバチを採集した。寄生バチは、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ及びヒメスズメバチの女王から検出された。女王における寄生率はキイロスズメバチで約20%、コガタスズメバチで約5%、ヒメスズメバチで約10%であった。寄生バチのスズメバチへの寄生はスズメバチへの産卵により成立し、スズメバチ体内で成長した寄生バチ幼虫の脱出により終了する。5月中旬の採れ始めのころ女王バチから寄生バチが検出されたので、寄生バチの産卵は女王が越冬を終えて活動を開始して間もなく始まると推測された。また、6月下旬以降寄生バチが検出されなかったので、寄生バチ幼虫のスズメバチからの脱出は6月中旬には終わると考えられた。推定される寄生バチ成虫の全長は2㎜程度であり、その卵は体長よりはるかに小さいはずである。このことを考えると産卵初期の寄生バチ卵を見落としていて寄生率が過小評価になっている可能性がある。一方で、寄生バチ幼虫の脱出したスズメバチはまもなく死ぬことから、6月下旬以降に採集されたスズメバチ女王を含めた寄生バチの寄生率は同様に過小評価の可能性がある。これらから、寄生バチの野外における寄生率の推定は、5月下旬から6月中旬に捕獲された女王バチを用いることが適切であると考えられた。飼育したスズメバチ女王の一部から寄生バチ幼虫が脱出した。脱出した幼虫の一部は繭を作った。繭からの寄生バチ成虫の羽化は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題ではスズメバチから新たに発見された寄生バチの基礎的な生態解明を目的としている。現在までにある調査地における寄生バチの宿主となるスズメバチの種、寄生率、寄生時期が明らかになった。また、宿主から脱出した寄生バチ幼虫が繭を作るところまでを確認した。これらから、調査地における寄生バチの基礎的な生態が明らかになりつつあり、現在までの進捗状況を、おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の今後の研究の推進方策については、寄生バチの分布調査と近縁種との系統関係の解明を試みる。平成4年度には、寄生バチの分布調査に重点を置いて研究を推進する。分布については九州や本州の数地点での広域の調査と、現調査地近辺の局所的な分布を調査する。寄生バチが採取された時は、系統関係の解明のための試料とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、計画していた出張を取りやめ、その結果、旅費と人件費・謝金の支出が少なくなった、ためである。一方、物品費とその他については、交付決定額の内訳のおよそ半分の支出となった。これらの状況を鑑み、次年度では旅費と人件費・謝金を物品費とその他に充当するなどして、課題推進のため適切に支出する。
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Research Products
(2 results)