2023 Fiscal Year Research-status Report
小笠原諸島の固有樹木種における水分環境に応じた適応放散的種分化プロセスの解明
Project/Area Number |
21K05694
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山本 節子 (鈴木節子) 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70456622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須貝 杏子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20801848)
伊原 徳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353594)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小笠原諸島 / 固有種 / 適応放散的種分化 / エコタイプ / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
小笠原諸島のタブノキ属は分類上、ムニンイヌグス(以下ムニン)、コブガシ、テリハコブガシ(以下テリハ)の3種が知られている。父島列島にはムニン、コブガシ、テリハの3種が分布し、母島列島にはムニン、コブガシの2種が分布している。先行研究より、父島のムニンは春に開花する系統と、秋~春に開花するタイプがあること、父島と母島のコブガシは葉裏の毛がそれぞれ絨毛と直毛という違いがあることが分かっている。本研究では、これらの小笠原諸島固有のタブノキ属に対してRAD-Seq解析を行い、タブノキ属の種および系統分化のパターンと分化の時期を調べた。解析に用いた集団は、父島ではムニン春咲、ムニン秋~春咲、コブガシ、テリハ、母島ではムニン秋~春咲、コブガシの計16集団である。これらの16集団は、種、開花期、地域に対応する6つのグループに分けられ、集団動態解析の結果、約45万年前に祖先種が分化し、18万年前に父島と母島の間での種間の移住と分化が主に起こったことが明らかになった。この進化パターンは2度の一斉分化を経ており、異所的な種分化が主要な要因であることが示された。 オオバシマムラサキの発現解析においては一部系統で発芽率が著しく悪かったため、代替の系統を急遽準備した。その結果、今年度発現解析用のRNAサンプル採取に至らなかった。オオバシマムラサキのRAD-Seq解析をまとめた論文は現在投稿中である。 これらの結果は、小笠原諸島における植物の進化パターンや種の分化に関する理解を深めるために、重要な知見を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね計画通りに研究を進めることができたが、オオバシマムラサキの発現解析に関する実験ができなかったため、進捗度を(3)やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
シロテツ属の集団動態解析を行い、種および系統分化のパターンを明らかにする。 オオバシマムラサキの乾燥耐性遺伝子の発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
材料の確保の問題で、オオバシマムラサキを用いたRNA-Seqによる発現解析が実施できなかったため。 残額はほぼ発現解析に用いられる。
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