2021 Fiscal Year Research-status Report
菌根性きのこ子実体由来ヘルパー細菌の宿主特異的作用メカニズムの解明
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21K05710
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
霜村 典宏 鳥取大学, 農学部, 教授 (00250093)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 外生菌根菌 / ショウロ / ヘルパー細菌 / 特異的作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
外生菌根菌ショウロRhizopogon roseolus子実体から分離したヘルパー細菌Paraburkholderia fungorum GIB024が示す菌糸生育促進効果を,細菌培養ろ液で検定する方法の確立を目指した.先ずは,細菌培養条件とその細菌培養ろ液における菌糸生育促進効果との関連性を調査した.その結果,GIB024を静置培養し取得した細菌培養ろ液の方が,攪拌培養し取得した細菌培養ろ液よりも高い促進効果を示した.さらには,菌糸体培養培地へ添加する細菌培養ろ液量とその培地における菌糸体生育量を調査した結果,菌糸生育の促進には低濃度の細菌培養ろ液が有効であった. 菌糸生育促進効果の特異性について多様な外生菌根菌を用いて調査した.調査方法としては,きのこ菌糸とヘルパー細菌GIB024を同一シャーレ内で離して培養する二員培養検定法と細菌培養ろ液での検定法の両検定法を用いた.その結果,クロマツPinus thunbergii林から分離したアミタケSuilus bovinus の菌糸生育を著しく促進したが,アカマツP. densiflora林から分離したアミタケの菌糸生育は促進しなかった.このことは,同一のきのこ種であっても,共生する樹木種が異なる菌株系統を用いるとヘルパー細菌への反応性が異なることを示している.さらに,ヘルパー細菌GIB024はクロマツ林や他のマツ林から採取したチチアワタケS. granulatuや他のSuilus属のきのこ菌糸生育に対して促進効果を示さないか,あるいは反対に阻害的に作用した.また,本現象は,細菌培養ろ液でも同様の現象が認められた.以上のことから,ヘルパー細菌GIB024はショウロを含め宿主クロマツと共生するきのこ菌株系統に対して特異的に生育促進すると考えられた.また,本きのこ菌株系統特異性に関与する物質は低濃度の水溶性物質であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分離済みであるヘルパー細菌GIB024において,クロマツと共生するきのこ菌株系統に対して特異的に促進作用を示す現象を見出し,さらに,殺菌した細菌培養ろ液でも再現できることを明らかにし,本菌株系統特異性には低濃度の水溶性物質が関与していることを突き止めた.本実験結果は予想以上の新知見であったので高く評価できる.しかし,ヘルパー細菌GIB024が阻害的作用を示したハナイグチ等のカラマツ林特有の外生菌根菌を含めた様々なきのこ子実体からヘルパー細菌を分離し実験に用いる計画であったが,細菌の分離源である子実体収集が困難であっため細菌を分離できなかった.そのため,計画していた多様な細菌を用いた特異性解析に関する実験を進めることができなかったことから,研究の進展がやや遅れていると判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
多様な外生菌根菌の子実体を収集し多様なヘルパー細菌の分離を進め,交差的な特異性を解析する.しかし,子実体入手が困難な事態を想定し,カルチャーコレクションに登録されている外生菌根菌から内生細菌を分離することも試みる.内生細菌を分離できれば,分離した細菌を用いてきのこ種特異性解析,さらには,きのこ菌株系統特異性解析を進める.一方,ヘルパー細菌を人為的にきのこ菌糸に感染させる人工感染実験に着手し,ヘルパー細菌のきのこ菌糸細胞への感染特異性と感染細菌の菌糸細胞内持続性を調査する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:概ね予算を使用したが,2751円の端数残額が生じた. 使用計画:次年度使用額は物品費として使用予定である.
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Research Products
(3 results)