中大規模木造建築物の維持管理に向けたシロアリベイト工法の最適化に関する研究

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K05717
• Research Institution: Forest Research and Management Organization
• Principal Investigator: 神原 広平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60727577)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: シロアリ / ベイト工法

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、ベイト製剤を摂食したシロアリ個体からの有効成分の抽出及び分析方法の確立と、当該方法を用いてベイト剤施用環境下のシロアリ個体中の有効成分を調べることで薬剤成分伝播の実態を把握することを目的とする。本研究は、室内試験（ベイト剤有効成分の抽出・分析方法の確立）と、野外試験（ベイト剤施用環境下で採取したシロアリ個体中の有効成分分析）で構成する。令和３年度において、室内試験はまず本実験に供試する有効成分の選定を行った。ベイト工法に用いる防蟻剤として国内で認定されている製品に含有される有効成分４種（ノバフルムロン、ノバルロン、クロルフルアズロン、ビストリフルロン）を選定した。つぎに、極性の異なる数種の溶媒を用いて４種の有効成分の溶解性を検討した結果、アセトンまたはアセトニトリルが抽出溶媒として適当であることが分かった。有効成分の分析方法の検討においては、アセトンで溶解した有効成分４種をガスクロマトグラフ質量分析装置（GC-MS）に供したところ、分析条件に更なる検討が必要であることが分かった。一方、アセトニトリルで溶解した有効成分４種を超高速液体クロマトグラフ分析装置（UHPLC）に供したところ、いずれの有効成分においても明瞭なピークを検出する条件を確立できた。野外試験は、茨城県つくば市及び熊本県熊本市にベイト剤を施用するための試験地を設営した。試験地の構成は、アカマツ人工乾燥材を餌木として方形区となるように一定間隔で埋設する仕様とした。シロアリ類による餌木への食害状況を定期的にモニタリング調査した結果、これまでに熊本市の試験地においてヤマトシロアリによる食害を確認できた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和３年度は、ベイト剤の有効成分とその抽出に適した抽出溶媒の選定、さらに選定溶媒を用いたガスクロマトグラフ質量分析装置（GC-MS）または超高速液体クロマトグラフ分析装置（UHPLC）での分析条件の検討を計画した。また次年度以降で実施予定の野外試験のための試験地設営と試験地内のシロアリ生息状況のモニタリング調査を計画した。当該年度の研究成果においては、GC-MS分析については分析条件で更なる検討を要するが、UHPLC分析においては良好な結果を得た。また、野外試験も試験地内でヤマトシロアリによる餌木への食害が確認でき、次年度以降の試験実施に向けた基盤整備が進んでいることから、総合しておおむね順調に進んでいると判断した。

Strategy for Future Research Activity

本研究は、室内試験（シロアリ個体からのベイト剤有効成分の抽出及び分析方法の確立）と、野外試験（ベイト剤施用環境下のシロアリ個体中の有効成分分析と薬剤伝播状況の実態把握）で構成する。次年度の室内試験においては、ベイト剤を強制摂食させたシロアリ個体からの効率的な有効成分の抽出方法とGC-MSまたはUHPLCを用いた分析条件を検討する。野外試験においては、令和３年度にシロアリ類の定着が確認できた試験地へベイト剤を施用し、分析実験に供試するサンプルとして経時的なシロアリ採取を実施する。

Causes of Carryover

（理由） 新型コロナウイルス感染症対策での行動制限等により出張を伴う野外試験地でのモニタリング調査の回数を減じたため。
（使用計画） 今回生じた次年度使用額については、次年度継続して調査・試験を実施予定の野外試験における餌木等の消耗品購入のための物品費及び試験地までの旅費として使用する。