2021 Fiscal Year Research-status Report
Chemical defense of conifers using the natural environment unraveling from the oxidation of essential oils
Project/Area Number |
21K05718
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
楠本 倫久 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80537168)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | β-フェランドレン / トドマツ / 酸化 / 化学的防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、針葉樹樹脂に広く含まれる特定の化学構造を有するモノテルペン炭化水素が、環境条件(熱、紫外線、酸素)によって素早く酸化物へと変化する現象に着目し、これらの酸化物が病原菌類に与える影響についてトドマツ樹皮を用いたモデル実験から明らかにする。全期間を通じた主たる研究内容は、1.精油成分の酸化反応に関わる環境条件の解明、2.精油成分の反応挙動の解明と酸化生成物の同定、3.トドマツ病原菌類に対する酸化精油の活性評価の3点であり、初年度は上記1.について検討した。 まず、酸化し易いモノテルペン炭化水素を豊富に含んだ精油試料を得るため、①β-フェランドレンを豊富に含むトドマツ樹皮精油の探索を行った。弊所林木育種センター内に植栽されているトドマツの樹皮を原料とし、個体・クローン別に減圧マイクロ波水蒸気蒸留(VMSD)装置にて精油を抽出した。各精油をGC-MS分析に供した結果、クローン間で精油の収率および組成に大きな違いが認められ、特定のトドマツクローン(朝日101号、遠軽1号など)の樹皮からβ-フェランドレンを40-50%(v/v)含む精油の抽出に成功した。続いて、β-フェランドレンを中心とした精油成分の処理条件を確立するため、②紫外線を用いた精油の促進酸化処理の有効性を検証した。上記の精油に内部標準を加えた精油溶液を調製し、外部および内部照射方式で用いて3条件(UV+N2、UV+O2、O2のみ)下で精油溶液を処理して主要3成分(α-ピネン、β-ピネン、β-フェランドレン)の経時的変化をGC-MS分析で定量的に調べた結果、再現性および酸化効率の点で内部照射方式が有効であること、紫外線と酸素が同時に存在する条件下でのみβ-フェランドレンが著しく減少しクリプトン等の酸化生成物の含有量が増加すること等の知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料調達、実験等については順調に進んでいるが、新型コロナ感染症拡大の影響で国際学会等における成果発表が滞っているため、次年度以降積極的に研究成果の発表等を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究内容2.精油成分の反応挙動の解明と酸化生成物の同定に関する内容を検討しており、①酸化生成物の経時的変化と定性・定量分析、②熱分解GCを用いた酸化重合物の分析の2点を実施予定である。 具体的には、初年度に確立した精油の促進酸化処理方法を用いて、GC分析からβ-フェランドレンの詳細な経時的変化を定量的に明らかにする。その際、一定の処理時間毎に精油をサンプリングして処理直後の反応挙動を分析すると共に、室温下・冷暗所下における処理後の経時的変化も分析する。酸化重合物についてはキューリーポイントパイロライザー(日本分析工業製)を用いたPy-GC分析により性状を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大により当初予定した国際学会に直接参加できなかったこと、研究進展に資する他の研究者との打合せが実施できなかったこと等の理由により、主に旅費について使用計画の変更を余儀なくされた。次年度使用額については、初年度に実施できなかった国際学会参加、研究打ち合せ等の出張経費として支出予定である。
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Research Products
(2 results)