2021 Fiscal Year Research-status Report
海中のシロザケ稚魚に寄生する原虫類鞭毛虫の病原性解明と防除技術の開発
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21K05736
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
水野 伸也 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 さけます・内水面水産試験場, 研究主幹 (70442655)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鞭毛虫 / イクチオボド / スピロヌクレウス / サケ / 海水 |
Outline of Annual Research Achievements |
イクチオボド、スピロヌクレウス各鞭毛虫について、小型かけ流し水槽に感染サケ稚魚(感染魚)と被感染サケ稚魚(被感染魚)を同居させ、海水中で28日間感染試験を行った。被感染魚の尾鰭をイクチオボド寄生の解析に、その腸をスピロヌクレウス寄生の解析に供した。イクチオボド(寄生頻度100%)、スピロヌクレウス(寄生頻度80~90%)は共に、海水中で感染魚から被感染魚に水平感染した。各鞭毛虫の寄生強度は、開始時から15日目まで増加したが、15日目から試験終了時までは変化しなかった。試験期間中、各鞭毛虫の寄生を受けた被感染魚に死亡や成長の低下は全くみられず、被感染魚の血漿Na+量は全個体で正常な海水適応能を示す170mM以下の値を示した。以上の結果から、イクチオボド、スピロヌクレウスは共に海水中でサケ稚魚に感染するが、海水中のサケに対する両鞭毛虫の病原性は低いことが明らかとなった。イクチオボドの虫体は、淡水中で表面に凹凸のある紡錘形(長径7~9μm)を示したのに対し、海水中では平滑な楕円体(長径10~13μm)を示した。この結果は、イクチオボドが海水中でシストを形成し、休眠状態になることを示唆した。一方、スピロヌクレウスの形態には、淡水中と海水中で違いがみられなかった。 2005年~2016年の間に道内3つの海域延べ12地点の沿岸で採集したサケ稚魚と延べ5地点で採集した増殖用海中飼育サケ稚魚について、尾鰭におけるイクチオボドと腸におけるスピロヌクレウスの寄生実態を調べた。その結果、イクチオボドの寄生は全地点の沿岸採集稚魚と海中飼育稚魚から、スピロヌクレウスの寄生は10地点の沿岸採集稚魚と2地点の海中飼育飼育稚魚から検出された。この結果から、両鞭毛虫は海中飼育を含めた道内沿岸のサケ稚魚に広く寄生すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に予定した研究内容を全て達成しており、本研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに進捗しており、令和4年度も当初予定した研究内容を全てクリアできるよう努力する。
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