2022 Fiscal Year Research-status Report
マイワシの卵形成を制御する分子・生理機構の基盤構築と再生産研究への展開
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21K05741
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
入路 光雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (50732426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 悠貴 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (20737316)
米田 道夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30450787)
風藤 行紀 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 部長 (60399996)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイワシ / 卵形成 / 17β-水酸基脱水素酵素 / エストラジオール-17β |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の遺伝子発現解析により、マイワシが持つ8タイプの17β-水酸基脱水素酵素(17β-HSD)のうち、type 3、type 12a、type 12bが卵巣で高発現していて、卵巣発達に伴って発現が増加することが分かった。そこで本年度は、これら3タイプをエストラジオール-17β(E2)の合成に関与する17β-HSDの候補として選定し、in vitroでの基質特異性を解析した。まず、各遺伝子を単離してpCAGGSベクターに組み込み、哺乳類細胞用の発現ベクターを作製した。哺乳類細胞のHEK293T細胞に形質転換して、各酵素の組換え体を発現させた。それぞれの培養細胞に、アンドロステンジオン(AD)またはエストロン(E1)を添加して培養後、培養液を回収した。ADを添加したものは培養液中のテストステロン(T)量を、E1を添加したものは培養液中のE2量を定量した。その結果、type 12aとtype 12bは、19%の変換率でADをTに、50%の変換率でE1をE2に変換した。一方、type 3はどちらの触媒作用も示さなかった。 さらに本年度は、生殖腺刺激ホルモン(GtH)によりtype 3、type 12a、type 12bの遺伝子(hsd17b3、hsd17b12a、hsd17b12b)が発現制御を受けるかどうかを調べた。卵黄形成を完了したマイワシ卵巣を培養して、GtHを含む下垂体抽出物を加えて培養後、卵巣をRNA laterで固定した。卵巣からRNAを抽出してcDNAを合成し、定量PCRにより各遺伝子発現量を定量した。その結果、下垂体抽出物を加えていないコントロールと比べて、いずれも遺伝子発現量に差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の大きな成果はまず、哺乳類細胞を用いたin vitroでの基質特異性解析により、マイワシ17β-HSDのtype 12aとtype 12bがADからT、E1からE2に変換する触媒作用を持つことを示したことである。本成果は、魚類ではじめて、17β-HSDのtype 12がADからTに変換することを明らかにした。昨年度までの解析により、マイワシ卵巣ではE1は合成されないことが分かっている。そのため、マイワシの卵巣では、17β-HSDのtype 12がADからTに変換することで、E2合成に主要な役割を果たすことが示された。下垂体抽出物を添加した卵巣培養実験では、3タイプの遺伝子発現制御は示されなかった。本解析については、さらなる検討が必要である。以上、解析は当初の計画に沿って順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
GtHによる発現制御を調べる卵巣培養実験では、本年度は卵黄形成を完了した卵巣を用いた。一方、昨年度の遺伝子発現解析では、hsd17b12a、hsd17b12bの遺伝子発現は卵黄形成開始前に当たる、表層胞の出現時期に増加していた。このことから、卵黄形成開始前の卵巣を用いて、再度培養実験を行う。また本年度は、栄養条件の異なるマイワシの標本を解析することで、肥満度に応じて変化するE2合成関連因子を探索するとともに、これまでに得られた成果の論文公表を目指す。
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Causes of Carryover |
主担当者(入路)の育休や分担者(米田)の異動により、実験時期に変更が生じたため。
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Research Products
(1 results)