2021 Fiscal Year Research-status Report
貝類の海面養殖による遊走子分散のブロックが海中林の形成に与える影響の解明
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21K05744
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 優和 東北大学, 農学研究科, 教授 (70251014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アラメ海中林 / 二枚貝養殖 / 胞子分散 / 遺伝子交流 / メタ個体群構造 / 藻場造成 / 遊走子 / MIG-seq 解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラメ群落における近交弱勢の可能性について、遺伝構造と個体群構成の変化を合わせて検討することを目的として、まず、牡鹿半島において、現場群落の生育状況についての調査を行なった。2021 年 7 月 ~ 2022 年 2 月に、牡鹿半島西岸の狐崎浜において、沿岸の 11 地点におけるアラメ群落の調査を行なった。各地点で 3 深度帯において 1 m x 1 m の方形枠を 6 枠ずつ置き、枠内全てのアラメの個体数を成体と幼体に区別して記録した。成体についてはアラメの年齢形質である枝長を測定して、年齢を推定した。また、遺伝構造解析のための DNA サンプルを採取した。得られたデータを同じ地点で同様の方法で調査が行われた 2018 年のデータと比較した。また、各個体から DNA 解析用の葉片サンプルを採取した。 2021 年の平均密度は人工護岸域 4 箇所、天然岩礁域 5 箇所、桂島周辺域 2 箇所でそれぞれ 0.67 個体 / m2、0.93 個体 / m2、2.5 個体 / m2 だった。2018 年ではそれぞれ 3.26 個体 / m2、4.96 個体 / m2、7.75 個体 /m2 だったため、全体的に個体群が衰退していることが分かった。また年齢推定の結果、2021年に生存している個体はすべて震災後に加入した個体であったが、若齢個体の比率が低かった。。 牡鹿半島狐先浜において採取した葉片サンプルについては、Mig-seq 法による解析のため、DNA 抽出と解析を進めている。また、女川湾におけるアラメ群落の遺伝構造解析調査のために、女川湾内のアラメ分布域についての文献情報及び聞き取りによる分布域についての事前調査を行なっている。また、志津川湾についてもアラメの分布域に関する情報の取得を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アラメ群落の遺伝構造解析については、牡鹿半島・女川湾・志津川湾での実施を予定している。このうち、牡鹿半島では群落構造の解析とともに遺伝子解析用サンプルを取得した。女川湾及び志津川湾については、2022 年度の広域採集調査のためにアラメ群落の分布域情報を事前取得し、2022 年度に調査を実施する予定である。また、マガキとホタテガイの消化管内容物の検討については、サンプル取得と解析の方法について具体的な検討を行なっている。水塊中の eDNA サンプルの検討についても、サンプル取得と解析の方法について検討を進めている。コロナ禍の影響により野外調査に出かけ難い状況が続いていたが、2021 年度にはこれらの研究の進展がみられ、次年度につなぐ準備も進行中であるため、研究の進捗は、概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、各調査地点におけるアラメ個体群の遺伝構造解析の実施を目指す。牡鹿半島についてはすでにサンプル採取を行なっているため、女川湾および志津川湾における調査を行う。効率良くDNA 解析用の葉片サンプルを採取するために、現場におけるアラメ群落の分布については、文献資料や聞き取りによる十分な事前調査を実施する。 アラメの局所個体群を単位とした遺伝構造解析の他に、遊走子が移動過程で二枚貝類に捕食されていることを示すため、二枚貝類の消化管内容のメタゲノム解析をおこなう予定である。また、遊走子の湾央における水塊中での移動の過程を捉えるための環境 DNA 解析も実施の予定である。これらについては、実施に向けて、試料の採取や解析方法についての具体的な準備を進める。
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Causes of Carryover |
初年度は、現場調査とDNA 解析用の試料採取が先行したため、採取試料の分析やデータ解析には経費がかからなかった。また、コロナ禍の影響で旅費の使用が少なかった。このため、これらに見込まれていた費用は次年度に繰り越した。次年度には遺伝子解析やデータ解析を実施し、実験補助を要するため、これらの繰越し額を使用する見込みである。
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