2023 Fiscal Year Annual Research Report
貝類の海面養殖による遊走子分散のブロックが海中林の形成に与える影響の解明
Project/Area Number |
21K05744
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 優和 東北大学, 農学研究科, 教授 (70251014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アラメ / 海中林 / 胞子分散 / 遊走子 / 二枚貝養殖 / 遺伝子交流 / 遺伝構造解析 / メタ個体群 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐藻類のアラメが形成する海中林はパッチ状の群落を単位とするメタ個体群構造である。水塊を隔てた群落間の距離による隔離は、低頻度の遊走子の交流によって繋がれていると考えられる。本研究では、湾内の養殖筏における二枚貝類による濾水活動が、群落パッチ間の遊走子による交流を阻む可能性に着目した。大規模に二枚貝養殖が行われている志津川湾と女川湾におけるアラメ群落の遺伝構造解析から、群落パッチ間の遺伝子交流を調査して、二枚貝類の養殖筏の海面配置との関係性を調べた。 女川湾に8地点、志津川湾に10地点の調査地点を設定し、各地点から30個体分のアラメ葉片を採取した。葉片からDNAを抽出し、MIG-seq法により一塩基多型を検出した。調査地点ごとに遺伝的な集団構造を推定し、遺伝的多様性と近交係数を求めた。また、地点間の遺伝的距離と地理的距離との相関関係および遺伝子流動を推定した。 女川湾では遺伝的に陸続きの4地点と、北東沖に位置する出島2地点の2つのクラスターに大きく分けられ、南東沖に位置する二股島と江島の地点は両クラスターの混合集団であった。最近および歴史的な遺伝子流動には北から南に向かう方向性が見られた。また、最近の遺伝子流動では同じ地点由来の移住率が出島以外の地点で0.89~0.93であり、地点間の交流が乏しいことが示された。 志津川湾では遺伝的に3つのクラスターに区別された。一方、遺伝的距離と地理的距離の間には強い相関関係が認められ、地理的に近い個体群間で盛んな遺伝子交流があった。最近の遺伝子流動では野島から他の地点へ移住率が0.08~0.25と、盛んな遺伝子交流が確認された。 以上の結果をそれぞれの海域における二枚貝養殖筏の分布と照合すると、養殖筏が存在すると隔離が生じ、アラメ群落の存在する地点間の距離が短いにもかかわらず分散が妨げられていることが示唆された。
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