2022 Fiscal Year Research-status Report
海洋生物資源調査手法の高度化に向けた漁具の挙動解明
Project/Area Number |
21K05746
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
塩出 大輔 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40361810)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
胡 夫祥 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80293091)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 漁具 / まぐろ延縄 / 挙動 / 振動 / 加速度ロガー / ビデオロガー |
Outline of Annual Research Achievements |
資源調査用漁具としても幅広く用いられるまぐろ延縄漁具について,東京海洋大学の練習船・青鷹丸の操業時に漁具の各部に加速度ロガーとビデオロガーを装着したところ,波浪による浮子(フロート)の上下動に起因するとみられる断続的な振動やしゃくり運動が釣針部で見られ,その損傷による餌の脱落が頻発していた。本研究課題の申請の基点となったこの結果は,一鉢当たりの枝縄数が6本と比較的少ない漁具での結果であった。そこで今年度は,漁具規模との関係を明らかにするために,昨年度にコロナ禍のために実施できなかった東京海洋大学の練習船・神鷹丸(986t)による延縄調査操業において同様の計測を試みた。小笠原諸島沖合海域において,浮縄長15m,枝縄長25m,枝縄間隔45mで,一鉢当たりの枝縄数12本で中間部に中立ブイを装着した延縄漁具(中立ブイ鉢)と,中立ブイを装着しない延縄漁具(通常鉢)の浮子部,枝縄の釣針と幹縄結着点の各部に深度計,加速度ロガーを装着して計6回操業を行った。その結果,釣針の振幅は浮子に近い枝縄では0.4m程度であったのに対して浮子から最も離れた枝縄では0.2m程度であり,浮子に近いほど有意(p<0.01)に大きかった。また,中立ブイ鉢では,中立ブイ近傍における枝縄の釣針では振幅が極めて小さく,0.05m程度であった。釣針振動の周波数解析の結果から,通常鉢,中立ブイ鉢ともに,浮子に最も近い1番枝縄の釣針振動には浮子の波浪によると考えられる動揺と同程度の周波数が見られたが,浮子から離れた5番枝縄では顕著には見られず,それよりも低周波の成分が見られた。また,併せて定置網の各部に発生する振動についても計測を行い,箱網全体の網成りとの関係について分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,資源調査漁具としてまぐろ延縄と定置網を例に挙げ,加速度ロガー等の計測機器の活用により,これまで把握が困難であった漁具に発生する振動と周期,まぐろ延縄ではその振動に起因する餌の脱落等の現象を計測して影響要因との因果関係を解明するとともに,その制御手法を確立することで海洋生物資源調査手法の高度化に寄与することを目的としている。本年度は,昨年度にコロナ禍の影響により実施できなかった調査船での操業や定置網での調査を実施し,解析を進めることができた。今年度においては,漁具に生じる振動の発生要因の解明にまで至ることができていないことから,次年度には模型実験等を併用した詳細な解析を実施していきたいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる3年目には,まぐろ延縄および定置網の操業データの蓄積に向けて準備を進め,得られたデータに対して分析を進める。また,環境条件の詳細な設定が可能となる大型回流水槽での模型実験を実施することで,本研究で着目している漁具の振動の発生要因の解明を目指す。まぐろ延縄に関する模型実験では,東京海洋大学の大型回流水槽内にまぐろ延縄模型を設置し,浮子に見立てた支柱を上下させることで波浪による上下動を再現し,流速,流向,浮子の上下幅と上下動速度を変えた場合の漁具各部の動きを深度計と加速度ロガーで記録する。流向,流速,浮子の上下動と漁具の挙動の関係をモデル分析することで,浮子から釣針部へと至る運動伝搬機構を明らかにする。さらに,実海域の操業実験で得られた結果に適用することで,実際の調査操業での現象解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
初年度(令和3年度)においてコロナ禍のために本学練習船によるまぐろ延縄調査航海や定置網での調査を実施することができずに本年度に繰越を行ったが,その残額が発生したものである。最終年度にはそれらを補う各種の調査,実験を計画しており,それらを実施することで予算が消化される予定である。
|
-
-
[Journal Article] Relationship between ocean area and incidence of anthropogenic debris ingested by longnose lancetfish (Alepisaurus ferox)2022
Author(s)
Mao Kuroda, Keiichi Uchida, Toshihide Kitakado, Daisuke Shiode, Masao Nemoto, Yoshinori Miyamoto, Hideshige Takada, Rei Yamashita, Hiroaki Hamada, Ryuichi Hagita, Hiroki Joshima, Yuta Yamada
-
Journal Title
Regional Studies in Marine Science
Volume: 55
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed