2021 Fiscal Year Research-status Report
落差遡上弱者カジカ類を指標とした農業用井堰改修による河川連続性の回復効果の検証
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21K05749
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
田原 大輔 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (20295538)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 農業用井堰 / 魚道 / カジカ類 / 河川連続性 / 落差解消ユニット |
Outline of Annual Research Achievements |
竹野川第1堰が回遊性魚類の遡上分布に与える影響を2018~2020年までの事前調査により、いずれの年においても、落差遡上弱者のカジカ類は第1堰下流で顕著に生息密度が高くなっており、通常の生息密度の10倍近く高い値を示す年もあった。2020年度冬季に第1堰の魚道改修工事が実施されたため、2021年に改修効果を評価する事後調査より、事前および事後調査の生息密度の値に有意差はなく、魚道改修後であっても、第1堰下流の生息密度が上流よりも顕著に高いままであった。しかし、第1堰上流で初めて確認された魚種が修験したことや、カジカ類のイラストマーの標識調査により第1堰を越えて遡上した個体が少数確認できた。また、春の現地調査により、改修した魚道の中央部付近まではカジカ類やウキゴリ類の稚魚の遡上が確認できたため、魚道出口に問題点があることを明らかにした。これより、生息密度が大きく回復するほどの顕著な効果はみられなかったが、一部では改修効果も確認できた。そのため、新設した魚道出口の改善箇所を明示し、さらなる改良工事の必要性を提言した。 落差解消ユニット(遡上板)を開発するために、実験用モデル水槽を作製し、遡上板の流速と角度を変化させて遡上率を比較した。カマキリは水面落差5 cmおよび全ての流速条件において、遡上が困難であった。カジカ中卵型も同様に水面落差5 cmで遡上が困難になる傾向にあった。また、落差解消ユニットの傾斜角度は、カマキリは15度でのみ遡上個体数が増加する傾向にあった。カジカ中卵型は流速および傾斜角度の条件に関わらず、落差解消ユニットの設置により遡上個体数が増加する傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナにより県外での現地での採捕調査が当初計画していた回数よりも減ってしまったが、日帰り調査に変更し最低限の調査は実施することができた。しかし、落差解消ユニットの遡上回復効果・耐久性は、現地河川に実験モデル水槽を設置して実験することを計画していたが、県外出張が制限されたため実施できなかった。 これまで注目されなかった農業用井堰の水生生物の遡上に対する影響を複数年にわたって明らかにすることができた。2020年に第1堰に魚道が新設されたが、十分な遡上回復効果は認められなかったが、新設魚道の問題点を明らかにし、事業者である兵庫県にも情報提供できたことは今後の追加改修に有益な情報を提供することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度冬季には第3堰の魚道改修が実施されたため、第1堰と同様に魚道改修効果検証の調査を継続して実施していく。また、第1堰の魚道出口の追加改修工事がされるよう、事業者と協議を続けていく。魚道改修効果の詳細を明らかにするために、カジカ類だけでなく他の魚種や水生生物でも標識採捕調査を実施していくことを検討する。 落差解消ユニット開発のモデル水槽では、遡上板の表面素材を検討するために、モデル水槽システムの改良が必要となる。また、現地河川で遡上板を設置して検証できるよう、現地の魚道出口に設置可能な遡上板および検証できる体制を整備していくことを検討していく。
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Causes of Carryover |
コロナによる県外出張の学内規制が生じたため、当初計画よりも現地調査の回数および日数が少なくなった。次年度はコロナの状況を配慮しつつ、現地調査を増やすように進めていく。 落差解消ユニットのモデル水槽を改良するために、専門業者の助言をもらい、水量およびを流速を増量できる装置に改良していく。
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