2021 Fiscal Year Research-status Report
表層の豊富な低次生産に応答する深層のカイアシ類群集
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21K05750
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松浦 弘行 東海大学, 海洋学部, 准教授 (50459484)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 駿河湾 / 深層採集 / カイアシ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、8月、10月、12月に、東海大学海洋学部の小型舟艇北斗(20t)を用い、沿岸表層水が支配する駿河湾の湾奥(水深約1000 m)で深度0ー1000 m間の深度別動物プランクトン採集を行った。採集ネットとして、閉鎖式多層曳きプランクトンネット(MTDネット)を用いた。一度の曳網には5つのMTDネットを100 m間隔で取り付けて、深層採集と表層採集の2回実施した。MTDネットは直径56 cmのリングネット(目合い0.33 mm)で、目的深度で水平曳きをした後に、メッセンジャーを投入して網を閉鎖させることで、目的深度だけで動物プランクトンを採集する機器である。 最初の8月の調査では、海底水深1000 mの測点で最深部のネットが海底直上の約900 mの採集ができるように考えていたが、海底に着底したようで上手くネットの閉鎖、曳網ができておらず、サンプルを得ることができなかった。10月の調査では着底しないように調整しながら曳網したが、ネット回収時に船のスクリューに巻き込んでしまうトラブルもあり、全ての深度から深度別のサンプルを得ることができなかった。12月の調査では、これまでの失敗から安全面を考慮して、最深部のネットは深度700ー600 mの傾斜曳きをするように調整し、ほかの深度の採集も同様に曳網することで、試料を採集することができた。 深層部のネット試料には、海底付近に分布し、カイアシ類よりも遊泳力がある大型のハリナガオオベニアミ(Gnathopausia longispina)が多数採集できていたことから、深層採集は上手くできていたものと思われる。現在、深度別の試料からカイアシ類を選別し、種別の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、駿河湾の湾奥(水深約1000 m)において、毎月2回の動物プランクトン採集を実施して各深度に分布するカイアシ類と沿岸表層水の関係性を検討する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で継続的に船舶を利用して毎月の試料を採集することはできなかった。特に春季から初夏には荒天もあり調査を実施することができず、夏から冬季に3回の調査しかできなかった。また最初の調査で想定した深度からの動物プランクトン採集に失敗したこともあり、今年度はネット採集を安全かつ確実に実施するための方法を確立する年と位置づけた。その結果、12月には深度別の動物プランクトンの採集が確実にできるようになった。現在、カイアシ類について解析を進めている。 以上のことより、動物プランクトンの採集について、方法論の検討、確立に進展はあったものの、研究結果の解析に至っていないため「遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実施状況において、予定していた月2回の採集を連続的に実施することが困難であったため、今後は表層の生産性の高い湾奥の採集を毎月実施することを計画している。また駿河湾の湾奥と湾口の比較をするために、湾口の採集は季節変化を加味して年に4回の実施を試みる予定である。深度別の動物プランクトンの採集を継続的に進めていくことで、表層と深層のカイアシ類の個体数、成長段階の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響のため、令和3年度の調査実施回数が当初計画していた回数よりも少なく、得られた試料が少量であったため、消耗品の購入が少なかった。また学会参加などの出張もなかったために、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(7 results)