2023 Fiscal Year Research-status Report
精漿はより良い稚魚の誕生に影響するのか?サクラマスの受精メカニズムを用いた研究
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21K05752
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
牧口 祐也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00584153)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 代替繁殖戦略 / サケ科魚類 / サクラマス / 精子 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道に生息するサクラマス(Oncorhynchus masou)は、残留型と降海型の二つの生活史を持つ。幼少期に多くの餌を摂取し、縄張りを獲得できる優位な個体は残留型となり、縄張り争いに敗れ、河川内で十分な餌を獲得できなかった劣位の個体は降海型となる。残留型は体が小さく、全身にパーマークがある一方、降海型は身体が大きく全身が銀白色で、産卵期には濃いピンク色の模様が現れる。繁殖期には、降海型が河川へ遡上し、同型でペアになり産卵する。その際、残留型の雄はスニーキング行動をとり、降海型のペアの産卵に割り込んで放精するが、タイミングの点で受精に不利である。 先行研究から、雌の体腔液が精子運動性能を向上させること、繁殖時に雌が残留型のにおいに誘引されることが明らかになっている。しかし、降海型と残留型の体腔液が誘引する精子数の違いは不明であった。本研究では、この点に着目し、精子計数チャンバー(DRM-600-Cell-VU)を用いた実験を行った。 2022年8月から9月にかけて、北海道斜里さけます孵化場において、サクラマス雌、降海型雄、残留型雄を各1尾ずつ、12グループ用意した。体腔液濃度0%、10%、70%の環境下で、トランズウェルプレートを用いて精子の誘引量を計測した。採取したサンプルはホルマリン溶液で希釈・固定し、倒立顕微鏡で撮影後、Pythonを用いて作成したソフトウェアで精子数を計数した。 実験の結果、体腔液濃度による降海型と残留型の精子誘引量に有意差は見られなかった。このことから、体腔液の化学的成分による精子誘導の可能性は低い可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初降海型と残留型の雄の精子数の違いに着目し、受精成功に関する研究を行っていた。しかし、先行研究から雌の体腔液が精子運動性能を向上させることや、繁殖時に雌が残留型のにおいに誘引される可能性が明らかになったため、体腔液濃度の違いによる精子誘引量の差異について新たな仮説を立て、実験を行った。その結果、体腔液濃度による降海型と残留型の精子誘引量に有意差は見られず、体腔液の化学的成分による精子誘導の可能性は低いことが示唆された。これらの新たな発見により、研究の方向性が明確になったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、降海型と残留型の精子誘引量に体腔液濃度による有意差が見られないことが明らかになった。今後、残留型の精子速度や精子濃度の優位性については、測定方法の確立と自動化が課題である。現在の測定方法では、測定者による個体差が生じる可能性があるため、画像解析等を用いた自動化システムの構築を検討している。これにより、測定の精度と再現性を向上させ、残留型の生存戦略についてより深い理解を得ることを目指す。これらの研究を推進することで、サクラマスの繁殖戦略の全容解明に近づくことができると期待される。
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Causes of Carryover |
購入したトランズウェルプレートについて、為替レートの問題で想定していた金額と異なったため差額が生じた。そのために次年度使用額が生じた。また、次年度使用額については精子運動計測のため消耗品費として使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)