2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05758
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
石井 伸昌 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 福島再生支援研究部, 上席研究員 (50392212)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 淡水魚 / 放射性セシウム / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性核種によって環境が汚染された。その結果、一部の淡水魚で出荷制限や出荷自粛が今も継続している地域がある。淡水魚の食としての安全と安心を確保するためには、放射性セシウムの淡水魚体内への取り込みを抑制することが重要である。腸内細菌はミネラルの腸管吸収を助ける役を担っていることが報告されていることから、本研究は放射性セシウムの体内への取り込み低減化に資する腸内細菌を見つけ出すことを目的として実施している。 2021年度は、腸内細菌叢の調査対象となる魚を選定するために数種類の淡水魚を捕獲した。6月及び7月の禁漁期間を除き、捕獲は毎月行った。捕獲した魚は筋肉とその他の部位に分け、あるいは魚一匹まるごとの試料として放射性セシウム濃度を測定している。これらを魚食性(オオクチバス 、カムルチ)と雑食性(日本ナマズ、アメリカナマズ、コイ、フナ、ニゴイ )に分け、細菌叢の違いを比較した。その結果、魚食魚の腸内環境においてPlesiomona属およびRalstonia属の細菌が優位に多いことが明らかとなった。魚食性の魚は雑食性の魚よりも放射性セシウムを蓄積やすい傾向があるため、これらの細菌は放射性セシウムの蓄積と関連する可能性がある。一方、雑食性の魚に多い細菌は14 OTU存在し、両方に共通する細菌は26 OTU検出された。 水には溶存態と微小粒子やプランクトン等の微生物に取り込まれた粒状態の放射性セシウムが存在する。魚の腸内細菌は経口摂取された粒状態放射性セシウムの消化と関係すると考えられることから、粒状態放射性セシウムの調査も行った。粒状態放射性セシウム濃度は年変動が認められ、6月から7月にかけて、そして9月から10月にかけて増加することが分かった。この変動パターンは植物プランクトン数やクロロフィルa濃度の変動と一致することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性セシウム濃度の分析は現在も進行中であるものの、魚食性と雑食性の魚で特徴的な腸内細菌を検出できたことは、2021年度の成果である。また、腸内細菌叢と関連することが予想される水環境中の粒状態放射性セシウムの年変動とその構成要素を明らかにしたことは、今後の研究の発展に繋がる。このように、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は次の3点に着目している:1)異なる魚種間での細菌叢の違い、同種間で肥満度が異なる個体間での細菌叢の違い、そして3)同種間で季節による細菌叢の違い。2021年度は異種間の細菌叢の違いを明らかにした。野外調査では必ずしも目的の試料が得られるとは限らないため、今後、2)と3)どちらの研究にも対応できるよう、毎月調査を行い、腸内細菌叢と放射性セシウム蓄積との関連に資するデータを蓄積する。また、魚種による食性の違いのみならず、同位体質量分析装置を用いた食性解析にも着手する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染により予定していた試料の処理に遅れが生じたため。 処理しきれなかった試料に関しては、翌年度に繰越し処理、および解析を行う。
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