2022 Fiscal Year Research-status Report
環境DNA分析による在来・外来サケ科魚類各種の資源量推定技術の開発
Project/Area Number |
21K05761
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
山本 祥一郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (20392897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | サケ科魚類 / 環境DNA / 中禅寺湖 / 上高地 / 環境DNAの分解過程 / イワナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、在来サケ科魚類および日本に定着した外来サケ科魚類各種を対象として、環境DNAデータを用いた魚類の空間分布の把握や資源量推定に必要な基礎データ「生物から環境中への環境DNA放出量、環境DNA分解速度」を室内実験により取得するとともに、モデル水面に設定した湖沼・河川において多地点採水調査、環境計測をおこない、環境DNAデータがサケ科魚類各種の資源量推定に適用可能かどうかを検討する。本年度は以下の室内実験、野外調査を実施した。①環境水中の環境DNAの分解過程を調べるために、5℃、10℃、15℃、20℃の水温に設定した300Lの円形水槽に、予めイワナ20尾を畜養した別の水槽から飼育水を10L投入し、投入後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、24時間後、その後10日後まで1~3日間隔で採水し、定量PCRを行った。各水槽の環境DNA濃度は指数関数的に減少し、高温環境下ほどDNAの分解が速くなることが分かった。環境DNA濃度が半分になる時間は、5℃でおよそ13.1時間、10℃で13.3時間、15℃で7.3時間、20℃で3.9時間であった。②イワナが生息する自然河川に20mの調査区間を流程に沿って20箇所設置し、それぞれの区間で採水および電気漁具によるイワナの採捕調査を行った。調査は、2022年4月、6月、8月、10月の4回行った。調査河川における環境DNAの空間分布は不均一であり、流程に沿った明瞭な増減傾向は確認されなかった。河川での平均環境DNA濃度および野外採捕調査から得られたバイオマス推定値は、季節毎に大きく異なり、ともに4月調査時で最も低く、その後高くなる傾向が認められた。③昨年度に引き続き、栃木県中禅寺湖および長野県梓川上流域に設定した調査定点において環境DNA採水調査を実施した。分析データの解析は次年度以降に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サケ科魚類各種を対象とした室内実験、モデル河川・湖沼での採水調査、遺伝子分析は計画に従い実施された。遺伝子分析未実施のサンプルが少数発生したが、次年度以降に分析できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル水面に設定している中禅寺湖、上高地の河川において、今年度と同様の採水調査を継続し、各魚種について環境DNA濃度の空間分布を調べるとともに、その時間的推移を調べる。
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Causes of Carryover |
本年度の遺伝子実験はほぼ計画通りに進んだが、予算を完全に使いきることができず若干の未使用額が生じた。これらは、次年度の遺伝子試薬等の購入にあてる。
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