2021 Fiscal Year Research-status Report
MHCの多型性をアジュバントとして用いたエドワジエラ感染症に対するワクチンの開発
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21K05769
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
片桐 孝之 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50361811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MHCの多型性 / アジュバント / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
MHCの異なるギンブナの血液は、レシピエントの細胞性免疫を誘導すること。そのレシピエントにEdwardsiella tardaホルマリン死菌体(FKC)を腹腔に注射すると、エドワジエラ症に対して強い免疫を獲得し、攻撃試験において有意な死亡率の低下を示したことはすでに予備実験で得られている。本年度は、以下の研究を行った。 クローンギンブナS3N系の血液をOB1系およびS3N系のギンブナに注射した場合、細胞性免疫の活性化がS3N系の血液を注射したOB1系でのみ活性化するのかを調べるため、インターフェロンγ遺伝子の発現を定量して検討した。IFN-γ1遺伝子は、血液注射後1日、IFN-γ2は血液注射後3、4、7日、IFN-rel2は、血液注射後3日にOB1の血液を注射したものより有意に高い値となった。OB1の血液を注射した個体では、これら遺伝子の発現に有意な変化は認められなかった。従って、攻撃試験における死亡率の低下は、MHCの異なる血液注射による免疫の活性化、つまり、アジュバント効果が影響していることが示唆された。 次に、異系統の血液注射による細胞性免疫の活性化が、注射1日から7日後に起こっていることから、この間にFKCを注射することにより、強いワクチン効果が得られるものと推測された。そこで、異系統の血液注射とFKC注射の間隔によって、攻撃試験による死亡率を調べることで適した期間を検討した。その結果、異系統の血液注射4日後にFKC注射した試験区で、80%の生残率を示した。次いで、これら両注射を同時に行ったものが60%の生残率を示した。一方、異系統の血液注射7日後にFKC注射した試験区では、生残率は0%であり、間隔があきすぎたものと考えられた。以上から、実用化を視野に入れた場合、両注射を同時に行うことで十分なワクチン効果が得られ、作業も半分に軽減できることが可能であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、MHC配列の異なる異系統のクローンギンブナの血液注射が、レシピエントにおいて強い細胞性免疫の誘導をもたらし、その反応がアジュバント効果として機能することが示唆された。また、この誘導とワクチン投与を同時に行うことで、十分な感染防御機能が発揮されることも示された。特に、この同時投与は、養殖現場での実用化において労働力の軽減を実現することから、有用な結果であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ギンブナの赤血球にはアロ抗原となるMHCクラスIが、白血球にはクラスIとIIが発現していると考えられる。異系統のクローンギンブナの血液注射が、レシピエントに強い細胞性免疫の誘導をもたらすのは、赤血球と白血球どちらであるのか。あるいは両者なのか。また、それらの細胞は生細胞である必要があるのかなどの疑問がある。特に移植白血球は、レシピエントに対して、強い障害を起こすことが明らかであり、これがレシピエントの側の細胞性免疫の活性化に重要となるかもしれない。一方、実用化を視野に考えると、赤血球は100日以上冷蔵保存が可能である。細胞性免疫の誘導が赤血球の生細胞のみで起こるのであるならば、消費期限を明示してワクチンとの併売が可能となる。加えて、死細胞での免疫活性化が見込めるならば、半永久的に冷凍保存が可能となる。 以上を明らかにするため、注射するアロ抗原として、全血、赤血球画分、白血球画分の比較、全血の生細胞と死細胞の比較、赤血球の生細胞と死細胞の比較、白血球の生細胞と死細胞の比較をワクチン投与と攻撃試験による生残率で判断する。
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Causes of Carryover |
実験に必要な試薬や物品が現有しているもので利用できたことから、その購入に予定していた予算を使用せずに遂行できたため。
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Research Products
(1 results)