2022 Fiscal Year Research-status Report
クルマエビの発生および成長過程におけるD-グルタミン酸の機能解析
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21K05774
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 尚子 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (30392533)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-グルタミン酸 / D-アミノ酸 / クルマエビ |
Outline of Annual Research Achievements |
水生無脊椎動物から哺乳類に至るまで、動物の諸組織中にはD-アミノ酸が存在することが明らかになっている。甲殻類や二枚貝では、D-アラニン(Ala)およびD-アスパラギン酸(Asp)が検出されているが、クルマエビにおいては、雄の生殖組織においてのみD-グルタミン酸(Glu)が存在していることが明らかとなっている。このD-Gluは、交尾の際に雄から雌に受け渡される精包においても検出されることから、クルマエビの生殖機能において重要な役割を担っているものと考えられる。D-Gluは受精卵には存在せず、性成熟が進み、雄性生殖腺が形成されてから産生される。そこで、D-Gluの生合成機構を解明するために、雄の片側の精包を人工摘出し、再生過程におけるD-Gluの分布を明らかにすることとした。その結果、精包の再生には10日ほどを要し、その過程で各生殖組織においてD-Glu含量の増加が認められた。したがって、精包の再生とともに、D-Gluが積極的に生合成されることが明らかとなった。 さらに、クルマエビ以外の甲殻類におけるD-Gluの分布を明らかにするために、ウシエビ、クマエビ、ヨシエビおよびバナメイエビ、カニ類であるガザミ、タイワンガザミ、およびトゲノコギリガザミ各組織におけるD-, L-アミノ酸含量の測定を行ったところ、いずれの種においても全ての組織にD-Alaは検出され、一部の組織からはD-Aspが検出された。しかしながら、D-Gluはクルマエビの近縁種においても検出されなかった。したがって、D-Gluはクルマエビ特有のD-アミノ酸であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画として、クルマエビ以外の甲殻類におけるD-Gluの分布を明らかにすること、およびクルマエビの精包を人工摘出し、再生過程におけるD-Glu含量の測定を行うことを目的としていたが、いずれも計画通り研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果の中で、クルマエビの精包を人工摘出すると、精包の再生過程でD-Gluが積極的に生合成されているタイミングが明らかとなった。そこで、今後は、精包の人工摘出によりD-Glu生合成を誘導させた個体を用いてトランスクリプト解析を行い、発現量の上昇が認められたmRNAを網羅的に解析することで、D-Glu生合成酵素を明らかにし、D-Glu生合成機構を解明する。
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Causes of Carryover |
当該助成金は、D-グルタミン酸の生合成機構を解明するために、mRNAのNGS解析を行う費用として確保していたものである。今年度、NGS解析の委託分析を依頼したが、依頼先の業者の不手際で試料を失ってしまったため、結局NGS解析までは到達できなかった。 そこで、今年度は、改めてNGS解析のための最適な試料の条件検討を行うこととした。次年度、この条件を用いてNGS解析を行い、この解析結果をもとにグルタミン酸生合成酵素の遺伝子を同定し、D-Glu生合成機構を明らかにするための研究に、次年度使用額分と翌年度分の予算を使用する。
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Research Products
(1 results)