2021 Fiscal Year Research-status Report
3Dフードプリンティングのための野菜粉末による魚肉すり身の坐り制御技術
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21K05791
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
谷口 成紀 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (10549942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 俊道 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (20399653)
大久保 誠 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (60381092)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3Dプリンタ / トランスグルタミナーゼ / すり身 / 坐り制御 / 野菜粉末 / 物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
すり身原料となる魚類筋肉を0.1M NaCl溶液で洗浄し、沈殿を0.2M NaCl溶液で懸濁した液からトランスグルタミナーゼ(以下TGase)の精製を試みた。陰イオン交換カラムによる2度の分画、ゲルろ過カラム、ヘパリン親和性カラムによる分画で順に酵素精製を行い、得られた酵素液をポリアクリルアミドゲルで電気泳動し銀染色したところ70 kDa付近にTGaseと思われる断片を得た。 野菜粉末中の坐り抑制成分と考えられるポリフェノール類の組成を調査するために、ホウレンソウ粉末を80%メタノール抽出して高速液体クロマトグラフィーに供試したところ、複数のフラボノイド類が検出され、スピナトシド-4'-グルクロニドをはじめとしたフラボノイド配糖体と思われるピークが得られた。 3Dプリンタのインクとして吐出可能な肉糊の物性をレオメーターで測定する方法として、アクリル樹脂製パイプを組み合わせた部材でインク用シリンジを固定し、シリンジの内蓋をレオメーターのプランジャーで押して肉糊を吐出させ、その際の応力を測定する方法を開発した。肉糊がスムーズに吐出できる場合はプランジャーの押込み距離に対する応力の変動係数が小さいのに対し、肉糊が坐ってスムーズに吐出できない場合にはその変動係数が有意に高くなることを見出した。 スケトウダラおよびカナガシラすり身から作製した肉糊にホウレンソウ粉末を5%加えた場合の動的粘弾性を測定したところ、低温下での時間変化測定により得られる貯蔵弾性率G'はどちらも無添加肉糊と比べて低く、5から50℃まで温度を上昇させる温度分散測定により得られるG'は、無添加肉糊と比較して5℃ほど低い20℃付近から急激な上昇を起こした。このことから、ホウレンソウ粉末を加えた肉糊は吐出前の低温下では無添加肉糊より坐り難く、吐出・造形後に室温にさらされた場合にはより坐りやすくなるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すり身原料となる魚類筋肉から精製したトランスグルタミナーゼ(以下TGase)を野菜粉末および既知のTGase阻害剤と混合した際の活性の変化を調査するためのTGaseの精製においては、精製作業のスケールアップをすることで完了の目途が立った。 野菜粉末中の坐り抑制成分のポリフェノール分析については、ホウレンソウ粉末中のフラボノイド配糖体のいくつかを検出できた。今後、分離したポリフェノール類をすり身に加えた際の物性を測定することで、ポリフェノール類の坐り抑制効果を確認できる予定である。 3Dプリンタのインクに適したすり身由来肉糊インクに適した物性値の確立については、インクカートリッジから適切に吐出可能な肉糊と吐出が阻害される肉糊との違いをレオメーターにて測定できるようになった。この手法を用いて、坐り抑制効果の異なる野菜粉末を加えた肉糊の物性を測定することで、3Dプリンタでの造形に最適な物性および野菜粉末の添加量を決定できる。 以上の点から、本研究の進捗は当初の予定に対しておおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
すり身原料となる魚類筋肉から精製したトランスグルタミナーゼ(以下TGase)を野菜粉末および既知のTGase阻害剤と混合した際の活性の変化を調査し、野菜粉末のTGase阻害効果を明らかにする。 野菜粉末中の坐り抑制成分と考えられるポリフェノール類について、坐り抑制効果が高い成分の同定を試みる。一定の坐り抑制効果がみられたホウレンソウ粉末からポリフェノールを分離し、すり身に加えた場合の物性変化を調査する。単一のポリフェノールの分離が困難であった場合は、酸性ポリフェノールや中性ポリフェノールの様な性質による大まかな分離を行いすり身に添加する。 3Dプリンタのインクカートリッジから適切に吐出可能な肉糊の物性を今年度開発した手法によりレオメーターにて測定し、適切に吐出できない肉糊と比較することでインクとして適した物性値を明らかにする。また、野菜粉末を段階的に加えた肉糊の物性を測定することで、3Dプリンタでの造形に最適な物性および野菜粉末の添加量を決定する。さらに、可能であればインクカートリッジとして肉糊を冷凍保存した際の物性変化を調査し、インクカートリッジとしての冷凍耐性を調査する。
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Causes of Carryover |
物品購入時の予定金額より納入時の金額が低くなった物品が複数あったため、残額が発生した。そのため、残額を次年度使用額として請求する。
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