2021 Fiscal Year Research-status Report
新品種導入・品種転換対応をめぐる小麦主産地間の比較動向分析―市場対応論理の導出―
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21K05792
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
横山 英信 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (70240223)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小麦主産地 / 新品種導入 / 品種転換 / 市場対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究の初年度であるため,まず,この間の全国的な新品種導入・品種転換の動向を統計的に整理した。その結果,この間,①作付面積上位10品種の全国作付面積シェアの低下,②日本麺用品種からパン・中華麺用品種への移行,③日本麺用品種内及びパン・中華麺用品種内での品種交代,が生じていることがわかった。 次に,そのような動向に影響をもたらす経済的・政策的・技術的要因を考察し,そこには,①農商工連携を含む実需者の販売戦略,②実需者の小麦購入価格=市場価格,③製粉を引き受ける製粉工場の製粉ラインの事情,④小麦の生産者所得,⑤畑作・水田作の作付体系,⑥市場価格による需要の変動とそれを見据えた生産者団体・行政等の対応,が大きく関係していることを明らかにした。 その上で北海道の農協連合会と道東の1農協に対して,この間の新品種導入・品種転換の動向に関する現地聞き取り調査を行った。同調査では,①パン・中華麺用品種の生産者所得は全般的に日本麺用品種のそれより高いため,日本麺用品種からパン・中華麺用品種への作付けの移行が見られるが,パン・中華麺用品種の中では収穫期における穂発芽のリスクによって春蒔きの品種に減少傾向が見られること,②ただし,小麦の作付動向は畑作輪作全体の影響を受けるため,小麦の前作・後作との関係で秋蒔きの品種が減少して春蒔きの品種が増加している地域もあること,③また,収穫時のコンバインやカントリーエレベーターにおけるコンタミネーション防止の点から新品種導入や品種転換を行う際には一挙に行う必要があること,がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究目標としていた,①全国的な新品種導入・品種転換の動向分析,②作付動向に影響をもたらす経済的・政策的・技術的要因の考察,については予定どおり進んだが,③北海道東部の2地域,東海の2地域及び九州北部の2地域の農協・行政・実需者団体等への聞き取り調査については,コロナ禍の影響で北海道については1地域に限定せざるを得ず,年度末に予定をしていた東海と九州北部の調査については断念せざるを得なくなった。そのため,当初予定した進捗の予定からやや遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究実績を踏まえて,2022年度は北関東・四国・近畿の農協・行政・実需者団体等への聞き取り調査を行い,各地域における新品種導入・品種転換に関する市場対応論理を析出する。さらに,2021年度にコロナ禍で調査を断念した東海,九州北部,及び北海道1地域についても,時間的な制約はあるものの,可能な限り多くの地域を対象に調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は北海道東部の2地域,九州北部の2地域,及び東海の2地域の農協・行政・実需者団体等への聞き取り調査を予定していたが,コロナ禍の影響によって北海道東部については調査地域を1地域に限定せざるを得ず,また,年度末に予定をしていた東海・九州北部の調査については断念せざるを得なくなった。このため,予定していた旅費等に残額が生じることになった。 次年度は今年度行えなかった地域の調査を実施することにしており,本年度の残額についてはその旅費に充てる予定である。
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