2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on the factors impacted to expansion and growth of organic farming and food market in Italy
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21K05797
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60292786)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イタリア / 有機食品 / 市場構造 / サプライチェーン / LFSC |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,過去の調査や学習により蓄積した情報やデータを活用し,「イタリアの有機食品マーケット動向にみるサプライチェーンの二重構造」(農林水産政策研究所『欧米の有機農業政策および国内外の有機食品市場の動向と我が国有機農業および食品市場の展望』2021)を取りまとめた.これにより,本研究課題(イタリアにおける有機農業及び食品市場の拡大・成長要因に関する研究)へのアプローチにおいて,主たる観察対象としてのイタリアの有機食品市場の歴史的経過と実態の把握が可能となった. 加えて,コロナパンダミックによりイタリアへの渡航を自粛せざるを得ない状況の下で,イタリアとの比較を念頭に入れた,国内の有機農産物および食品のサプライチェーンの構造に関する学習や調査を進めた.その研究成果は,『有機食品市場の構造分析(大山利男編,農文協,2022)』に「有機加工食品の市場およびサプライチェーンの構造と特徴(第6章)」および「緑茶の輸出動向にみる有機緑茶の可能性と課題(第7章)」として収録・刊行された.これら研究成果により,有機食品市場の展開にみる歴史的な経過やサプライチェーン・アクターの属性や関係性は,イタリアと日本に大きな相違が見られることが確認できた.とりわけ,イタリアの有機食品市場ではLFSC(long food supply chain)が主流となっていることに対して,日本ではLFSCの展開が未だ足踏み状態にあることが明らかになった. 次年度(2022)には,以上の研究実績を学術論文として取りまとめ,国内外の著名な学会誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,有機食品を原料農産物の生産現場から消費者に向けて進めていくサプライチェーンをLFSCとSFSC(short food supply chain)に区分した上で,イタリアにおいて各々のチェーンに機能する多数のチェーン・アクターへのdepth-interviewを研究手法とするケーススタディである.従って,イタリアへの渡航および該当事例への訪問調査が欠かせない. しかしながら,コロナ感染リスクによる海外への渡航規制および自粛要請を強いられる中,今年度(2021)はイタリアの現地調査の実行が困難な状況が続いた.研究が遅れている理由である. そこで,研究室のデスク上で進められる研究活動,すなわち本研究課題に関連づけられる過去の研究成果や蓄積された情報・データを改めて吟味するほか,さらなる学習・分析を加えて新たな知見を見出せるように努めた.こうした研究ワークは,当初の研究計画に示した分析枠組みのほか,予定しているケーススタディの成果を高めるための事前準備として位置付けられる. さらに,今年度は,ネット検索を通じた,本研究の参考・引用に値する文献の収集・整理にも力を注ぎ,100編以上の英文およびイタリア語の関連研究著作をリストアップした.これらの文献については,研究課題別・論点別にカテゴライズした後に,翻訳・要約の抜粋・整理を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2022)には,イタリアに渡航し,予め用意している関連事例=ステークホルダーへのインタビューの実現を最優先に,研究スケジュールおよび研究費の執行に関する計画を考案している. ところが,依然としてコロナウィルスの感染リスクが払拭されていない中,複数回にわたるイタリアへの渡航が保証されている状況に至っていない.そこで,次年度は,イタリアの現地調査の実行を前提に,細心の注意を払った上で,日本およびイタリアの出入国に関する国境措置,渡航要件などの情報の収集し,その措置・要件をクリアするほか,事例調査における該当組織への訪問受け入れの許可を得るための準備・努力を続ける. 幸いに,イタリアへの渡航調査の実行が可能となった場合は,研究計画調書に示した通りに,2021年度に予定していた,川上ステージ=有機農産物の生産現場の調査とともに,川中ステージ=流通加工段階の調査(2022年度計画)を同時に進めるべく,複数回に渡る現地調査を実施する. 一方,次年度も,今年度同様にイタリアへの渡航が困難となれば, zoomなどを活用したインタビューもしくは現地コーディネーターを通じた代行調査なども研究手段として視野に入れ,研究プロセスを少しでも前方に向けて進めていきたい.
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Causes of Carryover |
本研究は,有機食品を原料農産物の生産現場から消費者に向けて進めていくサプライチェーンをLFSCとSFSCに区分した上で,イタリアにおいて各々のチェーンに機能する多数のチェーン・アクターへのdepth-interviewを研究手法とするケーススタディである.従って,イタリアへの渡航および該当事例への訪問調査が欠かせない. しかしながら,コロナ感染リスクによる海外への渡航規制および自粛要請を強いられる中,今年度(2021)はイタリアの現地調査の実行が不可能であった.さらに,文献やデータを中心とする学習・分析には,すでに蓄積している文献や情報が活用されたほか,ネット検索を通じた,本研究の参考・引用に値する文献の収集・整理は,研究費の執行を必要とするワークではなかった.そのために,今年度は,イタリアへの渡航および文献はじめ物品購入の実績がないために,研究費の執行は不要であった. 本年度中に執行出来なかった研究経費を,次年度(2022)に繰り越し,次年度研究予算と合算して.複数回に渡るイタリアの現地調査に必要な経費に充てる予定である.
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[Book] 有機食品市場の構造分析2022
Author(s)
大山利男,李哉ヒョン,酒井徹,谷口葉子,横田茂永
Total Pages
272
Publisher
農山漁村文化協会
ISBN
978-4-540-21294-9