2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the factors impacted to expansion and growth of organic farming and food market in Italy
Project/Area Number |
21K05797
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (60292786)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イタリア / 有機農業 / サプライチェーン / Bio - district / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機農業の拡大に向け,EUが打ち出した「アクションプラン(2021)」では,イタリアのBio-district(以下にBD)を有効な実現手段として勧めている.そこで,BDが有機農業の拡大に関与するメカニズムを究明すべく,2023年12月に,三つのBD(Cilento BD,Amerina e Forre BD,Chianti BD)を訪れ,関連組織・団体およびキーパーソンへのDepth-interviewを行なった. その結果,BDは,①有機農業の広がるエリアの境界設定を,自然環境,景観,歴史・文化の共通性を基準に複数の自治体に広げ,管理の対象となる資源の包括的特定とともに,生産物の差別的価値の訴求を統一的に図っている,②協定に消費者,食品加工事業者,観光事業者,公的機関を有機農業の取組みに広く包摂しているために,ショート・フードサプライチェン(SFSC)構築,有機食品の公共調達,観光事業との連携により,多くの農業生産者が有機農業に安心して転換できる基盤を提供している,③有機農業を,労働環境の改善,代替エネルギー導入,自然環境や歴史・伝統文化とともに生物多様性の保全,ゴミ・廃棄物の適正管理,社会的弱者への配慮と組み合わさった,持続可能な社会システムの一部として位置付けているために,慣行的農業の技術的代替に留まる有機農業を持続可能性という理念に充実した有機農業に誘導する重要な働きをしているという3点が確認できた. これまでの研究では,SFSCが持続可能な資源管理システムという理念に充実した有機農業の質的拡大に貢献していることを実証してきた.これに加え,有機面積の面的広がりすなわち量的拡大には,農業に限らず,持続可能な地域開発に向けた地域社会全体の取組が必要であることが明らかになった.本研究の一連の研究成果は次年度以降の専門書籍の刊行を通じて公開する予定である.
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