2022 Fiscal Year Research-status Report
雇用劣化と新型コロナ危機下における地域労働市場と農業構造の動態変動に関する研究
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21K05809
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山崎 亮一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10305906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 祥穂 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40345062)
氷見 理 新潟大学, 自然科学系, 助教 (50845568)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 労働市場 / 農業構造 / 雇用劣化 / 土地利用型農業法人 / 地域農業システム / 東北型 / 近畿型 / 農村調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
①2022年度は、12月に、新潟県苅羽村にて、1集落37戸の農家を対象とした集落調査を実施した。また、明けて2月には、雇用労働を入れている農業生産法人7社を対象とした聞き取り調査をも実施した。 ②集落調査で聞き取った項目は、以下の通りである。a)農地貸出の状況、b)望ましい貸借契約についての思い、c)土地利用調整システムに関する意向、d)休耕田の状況、e)過去の農地売買の状況、f)今後の農地売買の意向、g)地域活動への参加状況、h)世帯員の就業状況。 ③農業生産法人を対象とした調査で聞き取った項目は、以下の通りである。a)組織概要、b)設立年(法人化年)、c)設立または法人化の経緯、d)経営耕地面積(総面積、自作地、借地)、e)借地の具体的内容、f)農地を借りるにあたって重視していること、g)望ましいと考える賃借契約について(借地したい農地条件)、h)未来の農地利用調整(村内全体)の仕組みに関する意向、i)過去の農地購入の状況、j)今後の農地購入の希望について、k)生産物について(主食用米、転作作物、施設園芸)、l)作業受委託の状況、m)法人の労働力について(役員、正社員、通年で雇用するパート・アルバイト、季節臨時雇用)、n)正社員の昇給・研修制度やキャリアパスに関する考え方、o)所有している機械・施設の状況、p)経営の現状と今後の意向、q)調査員による所感。 ④集落調査については、得られたデータを使って、excel形式の中間集計表を作成した。また、農業生産法人調査については、word形式の報告書を、7つの経営体ごとに作成している。 ⑤また2022年度には、2020年から筑波書房より刊行を開始していた山崎亮一著作集のうち、第5巻『本源的蓄積と共同体』と第3巻『越境する農業構造論:伊那谷、フランス、ベトナム南部』を出版し、全5巻を完成させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、当初、次の3つの調査対象地を設定していた。①長野県、②青森県、③北海道、である。その後に起こった研究代表者や分担者の所属の移動もふまえて担当や対象地の調整が必要になり、研究対象地に新たに新潟県を加えている。 長野県を対象とした調査研究については、2023年度中に山崎亮一・新井祥穂・氷見理編著『伊那谷研究の半世紀』を公刊して成果を世に問うべく、2022年度末に原稿を筑波書房に送った。同書では、過去半世紀の伊那谷研究を総括したうえで、近年の新たな動向を分析している。以下は、同書の章編成である。第1章:本書の課題と方法。第2章:地域労働市場の構造転換と農家労働力の展開-長野県宮田村35 年間の事例分析。第3章:2019年調査に見る宮田村の地域労働市場。第4章:2019年調査に見る宮田村の農業構造動態。第5章 宮田村における稲作機械共同所有・基幹作業受託組織の変遷。第6章:雇用劣化進行下における農地維持の担い手の展開論理。第7章:地域労働市場変遷下における農家経営の展開過程。第8章 雇用劣化地域における農業構造と雇用型法人経営-長野県中川村を事例として。第9章 中山間地域における組織経営体の存立形態―長野県飯島町の農業法人を事例として。第10章 「近畿型」の崩れ下における土地利用型法人の経営展開-長野県飯島町田切農産を例に。終章:総括的考察。 青森県については、本研究課題の前身である、基盤研究(C)18K05860で研究分担者であった曲木若葉が論文をまとめて学術雑誌に投稿している。 北海道についてはここまで取り組みがなかったが、2022年度末をもって山崎が定年退職により東京から札幌市に転居したため、2023年度に積極的に取り組む。 新潟県については、2021年度と2022年度に調査を実施しており、それに基づき中間集計表や法人に関するレポートを作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が扱っている4つの研究対象地のそれぞれについて、本年度の展望を述べる。 ①長野県伊那谷地方については、「現在までの進捗状況」のところで述べたように、山崎亮一・新井祥穂・氷見理編著『伊那谷研究の半世紀』の公刊に向けた出版社(筑波書房)への原稿提出が既に完了しているので、本が本年度内に出版されることになる。 ②青森県五所川原市についても「現在までの進捗状況」のところで述べたように、本研究課題の前身である、基盤研究(C)18K05860で研究分担者であった曲木若葉が論文をまとめて学術雑誌に投稿しているので、その取り組みに可能な限りで協力してゆく。 ③北海道については、山崎が新ひだか町に研究拠点を設定して、そこの養蜂業経営の実態分析、養蜂業の視点から見た地域経済の動向分析、環境問題に関する考察、に取り組むことになる。それらの研究・考察の成果は、論文の他に、YouTubeチャンネル「東京農工大学-農業経済学講義」(https://www.youtube.com/@R-Yamazaki)の中の、再生リスト「晴蜂雨読」(https://www.youtube.com/playlist?list=PLrFxIziy26hkAoXkmh1XlCUUwINtOp2RL)からも発信してゆく。 ④新潟県については、2021年と2021年に実施した、佐渡市と苅羽村の集落調査と農業生産法人調査について、既に、農家調査中間集計表と法人調査レポートを作成しているので、今後は、これらに記載されている情報を整理・分析して、その成果を、学会報告や論文として公表してゆく予定である。新潟県の担当者は氷見である。
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Causes of Carryover |
2022年度末に出版社(筑波書房)に原稿を提出し、2023年度中に出版することになる『伊那谷研究の半世紀』は、実際、2年度にまたがる事業となるので、そこに2年度分の助成を充当することになる。現在、出版社が初校を作成しているところである。今後は、校正を重ねたうえで索引を作成して出版に至ることになる。
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