2021 Fiscal Year Research-status Report
農業参入企業の農業生産力構造の解明と地域農業構造再編の可能性の検証
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21K05813
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大仲 克俊 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (80757378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
納口 るり子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00323246)
軍司 聖詞 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (40546751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 農地制度改正 / 企業の農地所有 / 食品小売業 / GAP / 規制改革会議 / 国家戦略特区 / 外国人労働力 / 国際労働力移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年はコロナ禍という状況においてヒアリング調査による実態調査を実施するのが難しい中で,研究分担者でオンライン等の調査を用いてヒアリング調査,又は公的資料等の分析による研究を行った.研究代表者である大仲は,一般企業の農業参入における農地制度改正における,農地所有に対する制度改正の議論について公開資料である規制改革会議及び国家戦略特区の議事録等から論点整理を行った.この研究では,国家戦略特区における一般企業の農地所有に関する制度改正において,企業が農地所有を認めることに対する根拠となる資料や効果について公開された資料から検証を行った.その結果,現時点で提出された資料から,一般企業に対する農地所有を認めることで地域農業の振興に繋がると判断するには難しく,制度改正を国家戦略特区から全国適用するのは難しいだろうと指摘した.また,国家戦略特区や規制改革会議の委員の議事録を検証していく中で,農業参入企業の実態や経営展開と会議で議論されている回生の論点のズレが生じていることも指摘した. 研究分担者の納口は,食品小売り企業の農業参入法人の農業経営の展開について,大手食品小売り企業の事例から検証を行っている.当該報告では,10年以上の農業経営を継続している大手食品小売り企業の農業経営を経年で整理することで,農業経営の発展過程を分析した論文である.この分析において農業経営規模の拡大が進む中で,GGAPの取得や有機JAS認証の取組みが行われてきたこと,また農業生産における技術力の向上が進展し,カット用から生鮮野菜の出荷が可能となり,また食品小売りのグループという性質も生かした加工・包装等の面からも成長していることを指摘した. 研究分担者の軍司は,農業分野における外国人労働力の導入状況に対する研究動向を整理している.その中で,外国人労働力の雇用,国際労働力の移動状況,統計整備の必要性を指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ禍において,当初予定していた実態調査が困難であったことが要因である.特に,県域を越える移動により農業参入企業,地方自治体へのヒアリング調査を実施することを研究計画で設定してきたが,首都圏や緊急事態宣言が発令した地域から他地域への調査や意見交換は困難であった.オンライン調査やコロナ感染がある程度抑制された時点での対面でのヒアリング調査を実施したが,新規調査地域において新たな調査事例の探索ができなかったのが,特に研究が遅れてしまった要因である. ただ,オンライン調査を活用することで,経年で調査を行ってきた事例に対する調査は可能であったため,オンライン調査によるヒアリング調査は実施することができた.このオンライン調査を活用することで,既に調査を実施することができた農業参入企業に対するヒアリング調査を進めていく予定である. 特に,大規模野菜作の農業経営を行っている農業参入企業に対してはオンライン調査を活用することで,デジタルでの資料提示を求めることが可能であり,具体的な農業経営のデータの提供を受けることができた.また,当該企業の農業経営の方針や経年での展開過程について対面でのヒアリング調査とは異なり,データ等で提供を受けることができたのは収穫であった.調査では,農業生産過程の成長と販売部門の取組み変化を把握することができ,農業参入企業が農業生産過程の成長による農業経営発展の可能性について示唆するものとなった.このオンラインでの調査を実施することで,対面では手に入れることが難しい資料の提供を相手方から受け取ることができる点は,今後のヒアリング調査において対面調査の代替ではなく,一つの手法として整理することができるかもしれない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方針であるが,2021年度に調査を行うはずであった地域への調査を積極的に行っていく予定である.特に,研究分担者で担当を設定している県へのヒアリング調査を早急に実施ししていく予定である.特に,静岡県・埼玉県・岡山県への調査は早急に実施ししていく予定である.これらの県では,農業参入企業に対してはオンライン調査等で昨年度も実施することはできている.そのため,県庁などの自治体への調査を早急に進めていく予定である. また,研究計画では今年度の調査を予定している兵庫県・山梨県・長野県の調査も併せて実施していく予定である.この調査では,地方自治体への調査を進め,地方自治体を介して農業参入企業へのヒアリング調査に結び付けていく予定である.そのため,早い段階で自治体へのヒアリング調査を進めていく予定である. 加えて,今年度では農業構造に対する統計分析を併せて進めていく予定である.2020年センサスを用いながらであるが,地域農業構造と農業参入企業の関係について検証していく予定である.ただ,農林業センサスだけではなく,先述した地方自治体の調査もあわせて活用していく予定である.特に,県レベルではなく,市町村や市区町村レベルの地域農業構造における農業参入企業を分析していくためには,地方自治体からの地域農業に関する情報は欠かすことはできないと考えるためである. なお,農業参入企業に対するヒアリング調査では,調査予定地として設定した地域以外の農業参入企業でも,本事業の趣旨である農業参入企業の農業生産力の展開過程を解明するのに適した事例であれば調査を実施していく予定である.特に,岐阜県等では地域の特産農作物の生産において農業参入企業が一定の地位を占めている産地があり,そういった事例も調査していく予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナにより,対面調査を十分に行うことができず,結果的に旅費等の使用金額が著しく低下することになった.また,対面調査による旅費の使用の減少が,結果的に物品費等の購入が進まなかった要因である.
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Research Products
(5 results)