2023 Fiscal Year Research-status Report
遠隔青果物産地における産地再編の構造と農協共販の理論に関する実証的研究
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21K05815
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板橋 衛 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90289645)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 農協共販 / 遠隔青果物産地 / 産地再編 / 農協改革 / 生産部会 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度調査研究を進めた熊本県における野菜産地の農協と連合会機能に関する研究は、食農資源経済学会シンポジウムの座長解題という形で、「食農資源経済論集」に発表した。 調査研究としては、愛媛県の果樹産地における異なる農協間での2つの共選組織の合併に関する調査研究を進めた。この共選組織の合併は、1つの共選施設の老朽化と施設維持のための経費拡大が直接の契機ではあるが、そうした問題が生じた要因は、生産量の減少だけではなく産地(共選)における深刻な農協共販離れが要因であった。そのために施設利用者の経費負担が大きくなり、そのことが更なる農協施設利用からの離脱につながるという悪循環が進展していた。つまり、実質的にもう1つの産地(共選)の内部崩壊であり、もう1つの産地(共選)への吸収である。調査研究では、そこに至った経緯を、1990年代からの系統農協組織再編と関連した果樹産地再編と関連付けて分析し、その成果は協同組合学会で報告している。また、果樹産地の再編と系統農協組織再編という視点で、静岡県と和歌山県の果樹(柑橘)産地の調査研究を進め、未定稿ではあるが調査結果を取りまとめている。他方、北海道の青果物産地に関しては、作目転換と農協合併を背景としたミニトマト産地の再編動向に関して調査研究を行ったが、とりまとめをする段階には至らなかった。 その他、日本協同組合学会および関連する研究会などに参加して、農協共販論構築のための協同組合理論の情報収集に努めた。農協に関する統計からは、農協経営の動向が農協の農業関連事業に与える影響を強めている傾向が確認された。その分析も今後の課題と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた地域・産地以外での聞き取り調査および資料収集を実施しているが、研究対象である遠隔青果物産地(北海道、四国、九州)の全てについて実態調査を基本とした研究を進めることはできていない。また、第29回全国農協大会の内容に即した各農協の事業展開が、農協による産地運営に与えている影響に関して検討することができているが、農協共販理論と関連した分析までには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も遠隔青果物産地(北海道、四国、九州)を対象とした、産地(農協、生産部会、連合会)への聞き取り調査や資料収集を進める。また、これまでに得られた研究成果は、学会発表や論文執筆を行う予定である。 農協共販の理論的な検討は、文献などによる検討・考察を継続する。今年度は3年に1回の全国農協大会が開催される年であり、農協全体の運動方針が示される。前回の農協大会から、地域農業振興計画の策定・実践を明確に運動方針に位置づけており、農協段階での産地形成への取り組みと農協共販のあり方についての考え方の提示が注目され、そのことの把握に努める。 また、系統農協は、「自己改革」の継続として農業関連事業に重点をおいて農業者の農業所得向上につながる事業展開を重視しているが、農協経営の問題もあり、必ずしも十分な資源を農業関連事業に投入できるわけではない。そういった点から、青果物産地の実態調査においては、生産・流通の状況と関連して農協経営を取り巻く今日における実態把握にも努め、総合的に検討して理論構築を試みていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度において予定していた聞き取り調査などがコロナ禍で実施することができずに繰り越していた分がある。次年度からの調査・研究で使用するが、1年間の延期も検討する。
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Research Products
(3 results)